イタリア料理、ユネスコ無形文化遺産に登録：文化的統合と生物多様性の国際的承認

イタリアの食文化が、国連教育科学文化機関（ユネスコ）の無形文化遺産リストに正式に登録された。この歴史的な決定は、インドのニューデリーで開催された第20回無形文化遺産会議において、全会一致で採択された。この登録は、単なる調理技術の評価に留まらず、イタリア料理が体現する持続可能性と生物多様性の保護という、現代社会における重要な価値観を国際的に承認したことを意味する。ユネスコは、調理法が世代を超えて継承され、料理の伝統が文化的、社会的に融合している点を特に評価した。

この栄誉は、特にカラブリア州のような地域における「クオコ・コンタディーノ」（農家料理人）の献身的な活動と、地域特有の農業生産物の重要性を浮き彫りにするものである。イタリア政府関係者は、この無形遺産としての地位を、イタリアの文化モデルに対する世界的な裏付けであり、国家経済にとっての戦略的資産であると捉えている。イタリア料理は、地域ごとの多様性が織りなすモザイクであり、食を通じて人々が集い、絆を深めるという階級のない社会的慣習を象徴していると、申請時にも強調されていた。

イタリア料理が世界市場にもたらす経済的影響は甚大であり、そのグローバルな価値は2,510億ユーロと推定され、前年比で5パーセントの成長を示している。特筆すべきは、この巨大な消費市場のうち、アメリカ合衆国と中華人民共和国が世界の消費の65パーセント以上を占めている点である。この経済的側面は、登録が単なる文化保護に留まらず、イタリアのライフスタイルと「メイド・イン・イタリー」製品の国際的な促進にも寄与するという政府の狙いを裏付けている。

この貴重な遺産を次世代に継承し、その品質を維持・向上させるための具体的な措置も講じられている。専門的な技能訓練を目的として「アカデミア・イタリアーナ・デッラ・クチーナ・エ・デル・ヴィーノ」（イタリア食品・ワイン文化アカデミー）が設立された。さらに、この文化資産を監視し、その価値を高めるための国際的な機関として「国際イタリア料理・良識監視団」の設立も発表された。これらの組織は、職人技術の保護と継承を担うCNAのような団体とも連携し、イタリア料理を支える基盤を強化する。

イタリアの食文化は、ナポリのピザ調理技術（2017年登録）や地中海式食文化（2010年登録）など、既に複数の要素がユネスコに認定されている。今回の「イタリア料理」全体の登録は、これらの個別の要素を包括し、イタリアの食の知恵と社会慣習全体を一つの文化体系として捉え直す動きである。この包括的な承認は、イタリアの「パエーゼ」（町）ごとの言葉や慣習の違いに見られるような、地域固有のアイデンティティの高さが食文化に深く根ざしていることを示唆している。

ミシュラン三ツ星シェフのマッシモ・ボットゥーラ氏が「イタリアの“国”そのものを象徴するもの」と評したように、この食文化はイタリア人のアイデンティティそのものである。この登録は、食文化の保護と継承を目的とした2023年3月の正式申請から、約2年半の審査を経て実現したものであり、料理人、農業従事者、文化団体が一丸となって支援した成果である。