Dapibus社、AIとロボティクスで黒コショウバエタンパク質の生産能力を増強へ

バルセロナのAbreraに拠点を置くバイオテクノロジー企業Dapibusは、黒コショウバエ（Black Soldier Fly: BSFL）の幼虫を利用した高付加価値タンパク質の生産拡大を推進している。同社は現在、農業食品廃棄物を年間16,000トン以上処理する自動化されたバイオトランスフォーメーションセンターを運営し、タンパク質ミール、脂肪、有機肥料を資源として生み出している。この事業は、食料需要の増大と資源制約という現代的課題に対し、持続可能で循環型の動物飼料サプライチェーンを構築する解決策を提供する。

Dapibusの生産拡大戦略の中核をなすのは、ロボティクスと人工知能（AI）の積極的な導入である。これらの先端技術の活用により、同社は事業のスケールアップを実現し、ペットフード、家畜飼料、水産養殖部門へ不可欠な原材料を供給している。BSFLは、乾燥重量で最大60%に達する高いタンパク質含有量と、有機廃棄物を効率的にバイオマスへ変換する能力で注目されている。欧州では、BSFLは魚粉や大豆ミールといった従来のタンパク質源の代替として持続可能な選択肢として台頭しており、欧州の昆虫タンパク質市場は2025年から2033年にかけて年平均成長率44.80%で成長し、37.2億米ドルに達すると予測されている。

同社は、現在の施設での実績を基盤とし、2030年までに欧州の昆虫タンパク質分野におけるリーダーとなることを目指し、現在よりも大幅に規模の大きい新工場の開設を計画している。この計画は、欧州連合（EU）の規制動向とも整合している。EUは2021年9月7日に昆虫タンパク質の鶏肉および豚肉飼料への使用を承認しており、これは循環型農業と持続可能な畜産に向けた重要な一歩である。Dapibusの事業モデルは、廃棄物を高付加価値資源に転換する「デュアルサイクル」の価値を提供し、従来のタンパク質生産と比較して炭素排出量を65%削減する可能性を秘めている。

欧州の昆虫タンパク質市場全体は、持続可能なタンパク質源への需要増加と環境意識の高まりにより力強い成長期にある。ドイツは2024年に最大の収益シェアを占めており、持続可能な食品システムへの政府支援が成長を牽引している。Dapibusが拠点を置くバルセロナ周辺では、C-16号線への第三車線追加やB-40号線との接続強化など、地域経済を支えるインフラ整備も進んでいる。Dapibusの2030年目標は、自動化とバイオコンバージョン技術を駆使し、この成長市場において持続可能なタンパク質供給の新たな標準を確立することを示唆している。