ベルリン和平交渉：ウクライナ、NATO加盟断念と引き換えに米国主導の安全保障枠組みを追求

2025年12月15日、ドイツのベルリンにある首相官邸で、ウクライナとアメリカ合衆国の代表団を中心とした集中的な外交交渉が展開された。この会談の核心は、2025年末までの戦争終結を目指す米国主導の和平計画の具体化であり、ウクライナ側がNATO加盟への野心を棚上げする代わりに、集団的自衛権に類似した拘束力のある安全保障上の保証を求めるという、地政学的に重大な譲歩を示した点にある。交渉は前日の14日から継続され、日曜日の会談は5時間を超える長丁場となった。

交渉の焦点となったのは、当初28項目から修正された20項目の米国提案和平計画である。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、NATO加盟の断念がウクライナ側からの大きな妥協点であると明言しつつ、いかなる合意も現行の最前線に準拠したものでなければならず、領土の割譲は断固として受け入れられないとの立場を堅持した。この姿勢はウクライナ国民の意識とも呼応しており、安全保障の確約があれば現行の戦線凍結を承認する用意があるとする世論調査結果が72%に上る一方で、明確な保証なしに領土を譲渡することには75%が反対しているというデータが示されている。

この枠組みを支える具体的な安全保障措置として、米国、カナダ、日本からの二国間保証が検討されており、米当局者は最終合意に至った場合、この保証を米上院で承認させ法的拘束力を持たせる方針を示唆した。さらに、欧州諸国は、米国の支援を受けつつ、ウクライナ軍の再建、空域・海域の確保を目的とした欧州主導の「多国籍軍」（有志連合）を創設することで合意した。この多国籍軍の編成は、ロシアの再侵略を防ぐための法的拘束力のある保証の詳細を公表するものであり、平時のウクライナ軍の規模を80万人に維持する目標も含まれている。

交渉のもう一つの重要な柱は、凍結されたロシア中央銀行の資産の活用であり、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相はこれに関する進展を「重要な一歩」と評価した。G7諸国は以前から、凍結資産の運用益を活用してウクライナ支援の枠組みを構築することで合意しており、日本からも凍結資産の収益活用による約30億ドルの調達が閣議決定されている経緯がある。しかし、凍結資産の利用については、国際法上のリスクや国際決済への悪影響を懸念する声もあり、EUは融資という形での活用を模索してきた。

交渉には、米国からスティーブ・ウィトコフ特使や元大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏といった、従来の外交官ではないビジネス寄りの人物が関与しており、これは交渉が「制度化されていない」アプローチを取っていることを示唆している。ロシア側は、ドミトリー・ペスコフ報道官が「時間を稼ぐための策略でなければ」真剣な和平決定を歓迎すると述べたが、ロシアの専門家フョードル・ルキヤノフ氏は、モスクワが主張する領土を譲ることはないと断言しており、停戦合意の実現可能性には依然として不透明感が残る。このベルリンでの会談には、ポーランドのドナルド・トゥスク首相や欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長ら多数の欧州首脳が参加し、最終的な議論のために集結する予定であった。

なお、この交渉の進展は、2025年12月14日から15日にかけてのウクライナによるノヴォロシースクでのロシアのキロ級潜水艦へのUUV攻撃という軍事的出来事と並行して進行した。