スイス国立銀行は政策金利を据え置き、フィリピン中央銀行は景気下支えで連続利下げを実施

2025年12月11日、スイス国立銀行（SNB）は金融政策決定会合を開き、主要政策金利を0.00%に据え置くことを決定した。この措置は、同国の金融政策スタンスが引き続き緩和的であることを示唆している。決定の背景には、2025年11月のヘッドラインインフレ率がゼロパーセントという近年の最低水準を記録したことがある。SNBの責務は、インフレ率を0%から2%の安定範囲内に維持しつつ、国内経済活動を支援することにある。

SNBは、2026年と2027年のインフレ率予測を下方修正しており、低インフレ環境の継続を見込んでいる。また、為替市場において必要に応じた介入の用意があることを明言し、スイスフランの動向が金融政策の重要な要素であり続けることを示した。スイスの政策金利は、2025年6月の会合で25ベーシスポイント引き下げられ0%となり、2022年末以来のマイナス金利時代を経て初めてゼロ水準に設定された経緯がある。

一方、同日、アジアのフィリピンでは、バンコ・セントラル・ン・ピリピナス（BSP）が金融政策会合で、ベンチマークである翌日物リバースレポレートを25ベーシスポイント引き下げ、4.50%とすることを決定した。これは、BSPによる一連の金融緩和措置としては5回連続の利下げとなる。この緩和サイクルは、大規模な政治・インフラ汚職スキャンダル、通称「フラッドゲート・スキャンダル」に起因する経済活動の停滞に対抗することを目的としている。

第三四半期の国内総生産（GDP）成長率は、統治機構の問題が経済に影を落とした結果、顕著に減速した。BSP総裁のEli Remolona Jr.氏は、この一連の緩和措置が終盤に近づいている可能性を示唆しつつも、スキャンダルの影響に対処するためには金融政策と並行した財政措置が不可欠であると指摘している。フィリピン経済は、政府目標のGDP成長率6%に対し、現実的には5%程度に留まる見込みであり、汚職スキャンダルが投資意欲を減退させている。

海外出稼ぎ労働者からの送金が家計消費を下支えしているものの、財政赤字と経常赤字の「双子の赤字」が経済の重荷となり、「クラウディングアウト」現象、すなわち政府への資金集中による民間部門の資金調達難が懸念されている。BSPは2025年10月の会合でサプライズ利下げを実施し、先行きのインフレ見通しを下方修正したが、2026年の見通しは3.1%から3.3%へ、2027年は3.4%から2.8%へ修正した。BSPのインフレ目標範囲は2%から4%であり、10月のヘッドラインインフレ率は1.7%で目標範囲内であったが、ペソ安がインフレ圧力を招く副作用にも留意している。

スイス経済は、2025年第1四半期に米国への早期輸出に支えられ強い成長を見せたが、世界経済見通しの悪化と貿易摩擦の激化が今後の不確実性をもたらしている。SNBは2025年のGDP成長率を1%から1.5%と予測しており、低金利が建設投資を促し、低インフレが個人消費を支えるとの見方を示している。