ブータン、ソラナ基盤の金裏付けデジタル通貨「TER」を発行：国家戦略としてのデジタル資産導入

ブータン王国は、物理的な現物金によって完全に裏付けられたデジタル通貨「TER」を正式に立ち上げた。このデジタル資産はSolanaブロックチェーン上で稼働し、Gelephu Mindfulness City（ゲレフ・マインドフルネス・シティ）特別行政区（SAR）の管理下に置かれている。この動きにより、ブータンは実物資産を代表するブロックチェーンネイティブな資産を提供する国家の一つとしての地位を確立した。TERはゾンカ語で「宝物」を意味する言葉に由来し、国家が保有する倫理的に調達された地金を100パーセントの担保としている。

初期段階において、TERの独占的な販売とカストディ（保管）は、ブータン初の認可を受けたデジタル銀行であるDK Bankが担っている。DK Bankはブータン王立金融当局とGMC当局双方の規制下で運営されており、投資家は同行を通じて直接TERを購入し、機関レベルの管理環境で資産を保有することが可能である。トークン化技術の提供にはMatrixdockが起用され、同社はSolanaネットワーク上での準備金証明とトークン化の実績を投入している。Matrixdockは、物理的な監査とオンチェーンデータの開示を組み合わせることで、従来の信頼ベースの資産を検証可能なオンチェーン資産へと変革するアプローチを推進している。

TERの発行は、ブータンが推進する広範なデジタル変革戦略の重要な一環と見なされている。この戦略には、すでに導入されているビットコイン（BTC）マイニングへの関与や、Ripple技術を活用した中央銀行デジタル通貨（CBDC）の試験運用が含まれる。GMCはSolanaの持つ高速処理能力と低い取引コストの利点を活用し、急速に成長するトークン化された現実資産（RWA）市場への参入を目指している。GMCは、2024年12月26日に公布された「2024年法適用法」に基づき、デジタル資産を戦略的準備金の一部として採用する計画を1月8日に発表しており、BTC、ETH、BNBといった主要なデジタル資産の保有も視野に入れている。

GMCの取締役であるJigdrel Singay氏は、TERの発表が「実物資産と主権国家の信頼を組み合わせ、価値ある資産をデジタル上で安全に表現する新たな基準を示す」と述べている。この取り組みは、ブータンが伝統的な価値観と最先端技術を融合させ、透明性、持続可能性、長期的な管理という同国の価値観に根ざした責任あるイノベーションを歓迎する方法のベンチマークを設定することを目指している。TERの導入は、国家レベルのブロックチェーン戦略を拡大する主要プロジェクトとして位置づけられ、主権ブランドを持つ金裏付けトークンを通じて、ソブリンアセットのトークン化市場に直接的な影響を与えることが期待されている。

インドと中国の間に位置するブータンは、経済を水力発電と観光に依存してきたが、このデジタル資産への傾倒は、経済的回復力を強化し、国際的な金融イノベーションのハブとなる野心を示している。