BYD、2026年投入予定の欧州向け最小・最安PHEVハッチバックを計画

中国の電気自動車（EV）大手であるBYDは、欧州市場を強く意識した新型プラグインハイブリッド（PHEV）ハッチバックの投入を具体的に進めており、2026年の市場投入を見込んでいる。この新型車は、欧州のBセグメント、すなわちスーパーミニクラスをターゲットとしており、同社が欧州で展開するPHEVモデルの中で最も小型で、価格的にも最も手頃なモデルとなる見通しだ。BYDの執行副総裁であるステラ・李（Stella Li）氏は、この車両がBYDにとって初めて欧州市場専用に設計されたモデルとなることを明言しており、これは中国市場からのモデル転用に依存してきたこれまでの戦略からの重要な転換点を示す。

新型ハッチバックの車体サイズは全長約4メートルと見込まれ、欧州の主要な競合他社、例えばトヨタのヤリスやルノーのクリオといった既存のフルハイブリッド車が優位を占めるセグメントに直接挑戦する。BYDはこのモデルに、同社のクロスオーバーであるAtto 2 DM-iで採用されているDM-i（デュアルモード・インテリジェント）技術を応用する方針である。このDM-iパワートレインは、1.5リッターの4気筒ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせ、システム全体で259bhpを発揮し、燃費効率は156mpg（マイル・パー・ガロン）に達すると公称されている。

BYDの欧州戦略において、PHEVはEVの普及をためらう顧客層にとって理想的な移行手段と位置づけられ、市場シェア拡大の重要な柱となっている。ステラ・李氏は、中国市場では新エネルギー車（NEV）の普及率が40%に達する中で、PHEVがEVの普及を上回る人気を博している事実を指摘している。この戦略は、輸入EVに対する関税上昇リスクを相殺する目的もあり、現地生産体制の構築と並行して推進されている。

現地生産の核となるのは、2026年第2四半期（Q2）の稼働開始を目指すハンガリーのセゲド工場である。この工場では、まずDolphin Surf EVやAtto 3といった純粋なEVモデルの生産が開始される予定であり、その後、この新型PHEVハッチバックのような欧州特化モデルの生産が続く可能性がある。BYDは欧州での販売網を2026年末までに倍増させる計画を掲げており、現在29市場に参入済みである。さらに、トルコでの第2工場に加え、欧州における第3工場の候補地としてスペインが有力視されており、グローバル展開の現地化を加速させている。

このBセグメントPHEVハッチバックの投入は、BYDが欧州市場において、既存の中国モデルの適応版から、現地の需要と規制に合わせた製品開発へと軸足を移していることを明確に示している。競合他社がフルハイブリッドシステムで優位性を保つこのセグメントにおいて、BYDのDM-i技術がコストとスペース効率の面でいかに優位性を発揮できるかが、市場での成功の鍵を握る。BYDは2026年に中国以外で150万台から160万台の販売を目指しており、欧州、北米、ASEAN諸国がそれぞれ輸出全体の約3分の1を担うという目標を設定している。