太陽観測衛星SOHO、打ち上げ30周年を迎え彗星発見記録を更新中

欧州宇宙機関（ESA）とアメリカ航空宇宙局（NASA）が共同で運用する太陽・太陽圏観測衛星ソーラー・アンド・ヘリオスフェリック・オブザーバトリー（SOHO）は、1995年12月2日に打ち上げられ、2025年12月2日に宇宙空間での運用開始から30周年を迎えます。当初2年間のミッション期間が予定されていましたが、その成果は現在も継続しており、2025年末までの運用延長が決定し、審査待ちの状態です。SOHOは、太陽の深部核から外層のコロナ、さらには太陽風が吹き出す領域に至るまで、太陽を包括的に研究する目的で設計されました。

SOHOは太陽観測を主目的としていますが、搭載機器である大型広角・分光コロナグラフ（LASCO）が太陽の強烈な光を遮蔽する機能により、太陽に極めて接近する「サングレーザー」彗星の発見において歴史的な記録を樹立しました。2025年4月1日時点で、SOHOは合計5,189個の彗星の発見を記録しており、これは天文学史上最も多くの彗星を発見した観測機としての地位を確立しています。この5,000個目の彗星確認は2024年3月25日に達成され、チェコ共和国在住の市民科学者であるHanjie Tan氏によって発見されました。Tan氏はNASAの「Sungrazer Project」の参加者であり、2009年以来200個以上の彗星を発見した実績を持つ、プロジェクト最年少の発見者の一人です。このプロジェクトは、一般市民がSOHOの画像から彗星を発見・報告することを可能にし、市民科学が科学的探求に与える影響を示す事例となっています。

SOHOの科学的貢献は彗星発見に留まりません。この探査機は、ヘリオセイスモロジー（日震学）を用いて太陽の内部構造を解析し、太陽の約3回分の11年周期にわたるほぼ連続的なデータを供給してきました。SOHOが提供するほぼリアルタイムのデータは、コロナ質量放出（CME）を検知し、地球の電力網や人工衛星を保護するための宇宙天気予報において不可欠な情報源となっています。SOHOは太陽の可視面や嵐が頻発する大気、さらには星々の間から吹き付ける原子の風と太陽風が衝突する遠方領域までを観測対象としています。

SOHOの長年の運用実績は、後続のミッション群に重要な文脈的基盤を提供しています。例えば、ESAのソーラー・オービターは2025年6月に軌道を傾け太陽の南極を直接撮像する観測を実施しました。また、NASAの太陽ダイナミクス天文台（SDO）も後継機器を搭載しています。さらに、太陽に最も接近するNASAのパーカー・ソーラー・プローブが2025年6月に主ミッションの最終近地点を完了した際、SOHOのデータは「マルチポイント」観測として重要な文脈的裏付けを提供しました。2024年後半に打ち上げられたESAのProba-3ミッションは、2025年6月に高精度な編隊飛行を実証し、微弱なコロナの画像を初めて送信しました。

将来的な太陽観測計画として、ESAは2031年の打ち上げを目指すVigilミッションを進めています。Vigilは太陽-地球ラグランジュ点L5に配置され、太陽を「側面」から監視することで、太陽嵐の早期警戒時間を最大5日間延長する可能性を秘めています。このVigilミッションへの重要な資金は、2025年のESA閣僚理事会で確保されました。SOHOの継続的な運用は、国際協力とオープンデータポリシーの模範として、現在の太陽物理学研究にとって極めて重要であり続けています。