2025年12月10日木曜日、世界金融市場は米国連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策決定会合の最終声明を注視する中、慎重な姿勢を示した。この警戒感はアジア地域にも波及し、水曜日の取引では連邦公開市場委員会(FOMC)の決定を前に地域的な株価指数が後退した。市場のコンセンサスは、CME FedWatchのデータが示す88%の確率に基づき、政策金利であるフェデラルファンド金利を25ベーシスポイント引き下げ、目標レンジを3.50%から3.75%に設定するという見方で固まっている。この措置は、2025年9月と10月に続く、同年で3回目となる利下げとなる見込みである。
このマクロ経済的な緊張が広がる中で、貴金属である銀は歴史的な節目を達成し、1オンスあたり60.9125ドルという過去最高値を記録した。この記録的な高騰の根本的な推進力は、今後5年から7年続くと予測される慢性的な供給不足であり、これに加えて、電気自動車(EV)部門やAIデータセンターの建設といった活発な産業需要が重なっている。特に、AIの普及に伴うデータセンターの需要拡大は、再生可能エネルギー設備や蓄電設備の増設を促し、銀の需要を押し上げている。
銀の需要構造は、伝統的な安全資産としての役割から大きく変化しており、現在、総使用量の約60%を産業需要が占めている。この産業需要の牽引役は太陽光発電パネルの製造であり、その使用量は2018年の2,706トンから2024年には6,147トンへと約2.3倍に増加した。一方、銀の鉱山生産は、銅、鉛亜鉛、金の副産物としての側面が強く、過去10年間で約26,000トン近辺で安定しており、需要の伸びに追いついていないのが現状である。さらに、米国では銀が11月に重要鉱物リストに追加され、サプライチェーンの混乱リスクに直面する「不可欠」な金属であることが示された。
地域市場の動向も当日のセンチメントを反映した。オーストラリアでは、グリーンインフラ部門の好調に支えられ、S&P/ASX 200指数が7,800水準付近で推移し、豪ドルは0.6550ドル近辺で安定した。日本市場では、来週の日本銀行による金融政策調整の思惑から、日経平均株価が0.3%下落した。中国では、生産者物価指数(PPI)が前年同月比で2.2%のマイナスを記録するなど、継続的な生産者物価のデフレを示唆する公式データを受け、CSI 300指数が0.9%とより大きく値を下げた。
市場の関心は、利下げの決定そのものよりも、それに付随するフォワードガイダンス、特に経済予測の要約(SEP)と2026年の更新された「ドットプロット」に集中している。パウエル議長が記者会見でどのように発言するかが注目される。一部のアナリストは、FOMC内で2026年の軌道に関して異例の意見の相違が見られることから、タカ派的なシグナル、すなわち利下げペースの減速を示唆する発言があれば、ドル流動性が引き締まり、ビットコイン(当時92,000ドル近辺で取引)のようなリスク資産に圧力がかかる可能性があると指摘している。予想される利下げと、12月1日の量的引き締め(QT)の公式終了が重なることは、デジタル資産にとっても重要な流動性の転換点となる。野村證券は、今回の0.25ポイント利下げはパウエル議長体制下で最後になる可能性が高いと見ており、その後は新議長の下で2026年に2回の利下げが見込まれると予測している。



