セルビア大統領、デジタル時代に対応した学生の集中力向上のため授業時間短縮を提案

現代の教育分野において、進歩的な教育学は従来の45分授業の構造に異議を唱え、現代の学習者のニーズに適合させるための教授法の模索を続けている。この文脈で、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、2025年の新年に向け、標準的な学校の授業時間を短縮する案を提示した。この提案は、教育の近代化に向けた重要な一歩として捉えられている。

提案の核心は、生徒の集中力と注意力の向上にある。専門家の指摘によれば、多くの生徒が45分間集中力を維持することは困難であり、授業時間の短縮はその非効率性の是正を狙う。心理学者のイェレナ・マノイロヴィッチ氏は、現代社会の急速なペースとソーシャルメディア上の短尺動画コンテンツの普及が子どもの注意力の低下に直結していると分析する。彼女は、授業時間を短縮することでカリキュラム内容を凝縮し、単なる試験対策のための丸暗記ではなく、深い長期的な知識定着を促す必要性を強調する。セルビアでは、2025年1月1日から最低月額純賃金が前年比13.7%増の53,592ディナールに改定されるなど、経済状況も変化しており、教育への投資にも新たな視点が求められている。

社会学者のボヤン・パナトヴィッチ氏は、教育改革の検討を支持しつつも、質が量に勝るべきだと強調する。ただし、30分授業を採用する場合、その時間は極めて集中的でなければならないという条件が付く。一方、心理学者のヨヴァナ・ストイコヴィッチ氏は、15歳未満の子どもたちがTikTokのようなソーシャルメディアによって絶えず刺激を受け、注意力がわずか8秒にまで短縮されていると警鐘を鳴らす。彼女は、ソーシャルメディアがシナプスの発達を妨げていると指摘し、授業の最初の20分間が学習において最も生産的な時間帯であると述べている。セルビアの教育システムは、初等教育8年、中等教育4年で構成され、中等学校進学時に専門分野を決定する点で日本と異なる。

これに対し、一部の専門家は、授業時間を短縮することで、既に負担が大きい知識量がさらに削られると懸念を示している。特に、45分間には重要な復習や計画の時間が含まれているため、その時間を削減することは知識の定着を損なう可能性があると警告する。対照的に、ドイツやオーストリアといった国々では、授業時間が最低でも50分に設定されており、90分のインタラクティブなブロック授業が肯定的な結果を示しているという国際的な事例も存在する。セルビア国内では、コロナ禍の期間中に、一時的に授業時間が30分または35分に短縮された経緯がある。ヴチッチ大統領は、2025年10月9日に来日し、石破総理と会談するなど、国際的な舞台での活動も活発である。

大統領によるこの提案は現在、公的な発表段階にあるが、セルビア国内の教育プロセスを現代化することの是非について、専門家と一般市民の間で活発な議論を巻き起こしている。デジタル環境下で成長する現代の児童生徒の認知特性を考慮すると、教育のあり方そのものの再構築が求められている。例えば、日本のPISA2018の調査では、日本の生徒の学校でのICT利用時間が短いことが報告されており、デジタル化への対応は世界的な課題である。セルビアの教育改革の動向は、デジタル時代における学習効果の最大化を目指す国際的な試みの一つとして注目され、単に授業の長さを変えるだけでなく、教育内容の密度と学習者の認知負荷のバランスをいかに取るかという、より深い教育哲学に関わる問題提起となっている。