パナマ運河、水不足が続く貿易の生命線に影響

2025年9月13日現在、パナマ運河はエルニーニョ現象によって悪化した持続的な干ばつにより、輸送能力の低下に直面しています。ガトゥン湖の水位は危機的な状況にありますが、日々の船舶通過数は干ばつ前の平均を下回っています。この輸送能力の制限は、船舶の輸送時間の増加とコストの上昇を通じて、世界の貿易に影響を与えています。

パナマ運河は、大西洋と太平洋を結ぶ重要な海上交通路であり、世界の海上貿易の約5％を担っています。この運河は、ニューヨークとサンフランシスコ間の航海距離を約12,600海里短縮し、時間、燃料、コストを節約します。しかし、2023年初頭から続く干ばつは、運河の運営に不可欠なガトゥン湖の水位を歴史的な低水準に低下させました。2023年10月の降水量は平年比43％減となり、1950年代以降で最も乾燥した10月となりました。これにより、日々の船舶通過数は、通常の36～38隻から2023年12月には22隻にまで減少しました。

この水不足に対処するため、パナマ運河庁（ACP）は、2027年着工予定のリオ・インディオダム建設を含む、水資源の確保に向けたインフラプロジェクトを推進しています。このダムは、水不足の緩和に貢献することが期待されていますが、次のエルニーニョ現象が予想される2027年までには稼働しない見込みです。このプロジェクトは16億ドル規模とされ、将来の干ばつに対する運河の持続可能性を高めることを目的としています。しかし、この計画は、土地の浸水や住民の移転を伴うため、環境や社会的な影響についても懸念が表明されています。

専門家は、気候変動がエルニーニョ現象の影響を増幅させており、パナマ運河のような重要なインフラが気候変動の影響を受けやすいことを指摘しています。過去の干ばつでは、船舶の喫水制限や輸送枠の削減が行われ、一部の船舶は喜望峰を回るなど、より長くコストのかかる代替ルートを利用せざるを得なくなりました。例えば、2023年には輸送枠が3分の1以上削減され、燃料費と配送時間の増加を招きました。このような状況は、グローバルサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにし、適応戦略の必要性を強調しています。

運河の運営能力の低下は、世界中のサプライチェーンに波及効果をもたらし、消費者物価の上昇にもつながる可能性があります。2024年のAP通信の報道によると、このような制限により、輸送費が最大20％上昇し、消費者物価へのインフレ圧力を高めたとされています。パナマ運河庁は、水資源の管理と運河の持続的な運営のために、新しい貯水池の開発や、より高度な水管理システムの導入など、長期的な解決策を模索し続けています。これらの取り組みは、気候パターンの変化に対応し、運河が今後も機能し続けることを保証するためのものです。しかし、これらの対策が完全に効果を発揮するには時間がかかり、当面の間の課題は依然として残ります。パナマ運河の現状は、気候変動が世界の貿易インフラに与える影響の大きさと、それに対する適応策の緊急性を示唆しています。