インダス・ブラインド・イルカ、保護策の成果で個体数回復の兆し、新国家戦略を策定中

世界で最も希少な淡水哺乳類の一つであるインダス・ブラインド・イルカ（*Platanista gangetica minor*）の個体数に、パキスタンのインダス川流域で回復の兆しが見られており、保全活動の成果が示されています。IUCN（国際自然保護連合）により「絶滅危惧種」に指定されている同種の個体数は、現在約2,000頭と推定されていますが、チャクラン・シャリフ区間での最近の確認は、導入された保護措置の有効性を裏付けています。

パンジャブ州野生生物・公園局は、チャクラン・シャリフやタウンサ・シャリフなどの河川域で厳格な保全プロトコルを発動しました。これには、法執行の強化と地域住民への啓発活動が組み込まれています。野生生物レンジャーの副主任は、最近15頭を超えるイルカの群れが確認されたことを報告しました。法執行の強化策の一環として、2024年5月にはザヒル・ピール警察署で初の情報報告書（FIR）が違法な狩猟者に対して提出されるという事例があり、密猟に対する抑止力となっています。

インダス・ブラインド・イルカは、濁った水中での視覚がほぼないため、高度な反響定位能力に依存しています。この種の生息域は歴史的にインダス川の約3,400キロメートルに及びましたが、現在ではその20パーセント未満に限定されています。ダムや取水による生息地の分断が深刻な脅威であり続けていますが、WWFパキスタンは1999年以来、保全活動に深く関与しています。特にパンジャブ州では、シンド州に比べて個体数が少なく、違法な網漁を含む持続不可能な漁業慣行が最も差し迫った脅威となっています。

2017年の包括的な調査では、チャシュマとスックル堰の間に約1,816頭の個体が確認されており、これは2001年の最初の調査で推定された1,200頭から50パーセントの増加を示しています。この増加は、1970年代に禁止されたイルカの狩猟と、その他の効果的な保全行動が組み合わさった結果であると見られています。

パキスタン政府は現在、連邦および州の機関とWWFパキスタンとの連携により、この絶滅危惧種の保護と生息地の回復を目指す5カ年国家戦略を策定中です。この計画は、2011年に策定された以前の計画を、河川生態系の変化と新たな脅威に対応するため包括的に見直すものです。計画には、集中的な保護による個体数増加、河川および湿地の生息地の再生、法執行の強化、救助・監視ユニットの拡充、そして地域社会の参加と若者の意識向上への注力が含まれています。

保全活動の成功の鍵は地域社会の関与にあります。WWFパキスタンの「ブーラン・ドスト・プログラム」のような市民科学イニシアチブは、漁師コミュニティがイルカの目撃情報や脅威に関するデータ収集に協力することを可能にしています。また、灌漑用水路に迷い込んだイルカを救出し、主要な河道へ安全に移送する救助活動も継続されており、過去数年間で100頭以上が救出されています。これらの協調的な取り組みが、チャクラン・シャリフでの最近の個体数増加という具体的な成果に結びついています。