Kマート、強制労働疑惑で法的調査に直面

オーストラリアのウイグル・タンリタグ女性協会（AUTWA）は、中国・新疆ウイグル自治区における強制労働との関連が疑われる衣料品サプライヤーからの調達に関する透明性を求め、Kマート・オーストラリアに対し連邦裁判所に訴訟を提起しました。この動きは、オーストラリアの企業倫理とサプライチェーンの監督に対する厳しい視線を集めています。

AUTWAは、Kマートが2024年および2025年の工場リストに掲載しているサプライヤーのうち、新疆ウイグル自治区に関連する2社について、強制労働のリスクを適切に管理しているか、またその調達に関する公表が誤解を招くものではないかを確認するため、Kマートに対し関連文書の開示を求めています。同協会は、新疆ウイグル自治区におけるウイグル族やその他のテュルク系イスラム教徒に対する組織的な強制労働や人権侵害の報告が国際的に広く認識されていることを指摘しています。

Kマートはこれらの疑惑を否定しており、15年以上にわたり現代奴隷のリスクを特定・軽減するための「倫理的調達プログラム」を導入していると主張しています。同社は、定期的な監査や現地視察を通じてサプライヤーを監視していると述べており、透明性の一環として工場リストを公開しているとも強調しています。

しかし、この訴訟はオーストラリアの現代奴隷問題への対応における規制上の課題を浮き彫りにしています。オーストラリアの「現代奴隷法（Modern Slavery Act 2018）」は、年間売上高1億豪ドル以上の企業に対し、サプライチェーンにおける現代奴隷のリスクとそれに対処するための措置について年次報告を義務付けていますが、強制労働に関連する輸入品を禁止する直接的な措置や、報告義務違反に対する罰則は含まれていません。米国などが新疆ウイグル自治区からの輸入品を禁止する措置を講じているのと対照的に、オーストラリアのアプローチは企業の自己申告と透明性に依存しています。

専門家や人権団体からは、この訴訟がオーストラリアの現代奴隷対策の不備を露呈させ、企業の説明責任を強化する契機となる可能性が指摘されています。また、Kマートが「倫理的」かつ「奴隷労働フリー」であると主張する自社の倫理的調達に関する声明が、オーストラリア消費者法に違反する誤解を招く、または欺瞞的な行為にあたるのではないかという点が争点となる可能性があります。オーストラリアでは、年間約174億米ドル相当の製品が強制労働のリスクを抱えて輸入されていると推定されており、この問題への取り組み強化が求められています。

この裁判の結果は、オーストラリアの小売業界全体におけるサプライチェーンの透明性と倫理的な調達慣行に対する監視を強化し、同様の懸念を持つ他の企業に対する法的措置の先例となる可能性があります。消費者の信頼と企業の社会的責任が問われる中、Kマートの訴訟は、現代社会における労働搾取の問題に対する意識を高める重要な一歩となるでしょう。