ソユーズMS-28のISS到着とバイコヌール発射台損傷がロシアの有人宇宙飛行能力に与える影響

2025年11月27日、ソユーズMS-28宇宙船はカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、数時間後に国際宇宙ステーション（ISS）へのドッキングに成功した。このミッションにより、NASAのクリス・ウィリアムズ宇宙飛行士とロスコスモスのセルゲイ・クド＝スヴェルチコフ、セルゲイ・ミカエフ両宇宙飛行士の3名がISSに到着し、一時的にステーションの乗員数は10名に増加した。彼らは、マイク・フィンク、ゼナ・カードマン、ジョニー・キム（NASA）、ユイ・キミヤ（JAXA）、セルゲイ・リジコフ、アレクセイ・ズブリツキー、オレグ・プラトノフ（ロスコスモス）から成る第73次長期滞在クルーと合流した。この新クルーは、2026年夏までの約8ヶ月間のミッションを予定しており、ロシアのプログラムの下で40以上の実験と2回の船外活動（2026年4月と6月）が計画されている。

この成功裏の軌道投入とは対照的に、打ち上げ後にバイコヌール宇宙基地の発射台31番に重大なインフラ損傷が確認された。ロケットの第1段エンジンからの噴射ガスが、発射台下の第6発射施設のサービスキャビンを損傷させたことが判明し、この発射台は一時的に使用不能となった。バイコヌール宇宙基地は、旧ソ連時代からロシアの全ての有人宇宙船の打ち上げを担ってきた歴史的な拠点であり、このインフラの損傷は、ロシアの有人打ち上げ能力の継続的なアクセスに懸念を投げかけている。一部の専門家は、この発射台の復旧には最大2年を要する可能性があり、ロシアが有人宇宙飛行能力を一時的に喪失する事態になりかねないと指摘している。

この出来事は、ISSの継続的な運用維持におけるアクセス手段の多様性の重要性を改めて浮き彫りにした。ISSの運用は、NASAとロスコスモス間のクロスフライト協定に基づき、両国の宇宙飛行士が互いの宇宙船を利用する形で維持されている。ロシアは独自の宇宙ステーション「ROSS」の建設を準備中であり、2025年以降のISSからの撤退を示唆していたが、現時点ではパートナーシップの継続が図られている。しかし、バイコヌールでのインフラ問題は、米国商用クルー・ビークルなどの代替手段が、将来的な宇宙活動の継続性確保にいかに不可欠であるかを強調している。

ソユーズMS-28のクルーは、2周軌道を経て約3時間10分でISSに自動ドッキングする高速ランデブー方式を採用した。また、このミッションでは、ロシアのSberbankが開発した大規模生成AIモデルであるGigaChatニューラルネットワークが初めて乗組員の業務に統合され、報告書作成やデータベース管理の日常業務を支援する予定である。一方、ISSの次のクルー交代は、2025年12月9日にソユーズMS-27クルーが地球に帰還する予定となっており、ISSの運用スケジュールは引き続き国際的な協力体制に依存している。この成功とインフラの課題の並存は、宇宙開発における技術的成果と、老朽化する地上支援設備の維持管理という構造的な課題を同時に示している。