エストニア、ウーデキュラに最新鋭ブロイラー農場を開設し食料安全保障を強化

エストニア共和国は、国内の食料生産能力を向上させる戦略的措置として、ウーデキュラ近郊に同国で最も先進的なブロイラー農場を開所した。この新施設は、年間1,500万羽以上のブロイラーを供給する能力を持ち、国の食料安全保障目標達成に向けた重要な一歩となる。この大規模インフラ投資は、国内の食肉供給の安定化と食料供給網のレジリエンス（強靭性）向上を目的としている。

総額500万ユーロが投じられたこのプロジェクトは、以前は放置されていた土地に最先端の生産拠点を構築した。この農場は、動物福祉と生産効率の両立を追求しており、鳥類の生体リズムに合わせた特殊な照明システムや、温度・湿度の変動を極限まで抑える精密な空調・加熱システムが導入されている。これらの技術的要素は、持続可能な畜産運営の新たな基準を設定するものと見られている。

この事業を担うMaag Agro社は、既にエストニア国内で最大の豚肉およびブロイラー生産者を誇る主要企業である。今回のウーデキュラ農場の稼働により、同社が運営する既存の8つの農場と合わせた年間総生産量はさらに増加する。Maag Agro社の取締役であるPriit Dreimann氏は、この拡張が国内の食料生産能力増強という長期戦略を後押しすると述べている。また、鳥類飼育部門ディレクターのEve Samuli氏は、新施設の導入が作業効率の向上と、より優れた飼育環境の提供に寄与すると強調している。

施設は単なる生産規模の拡大に留まらない。建設を担当したMapri Ehitusとの連携のもと、エストニアでは前例のない規模となる120メートル長、30メートル幅の鶏舎が2棟建設された。これは、国内の食肉供給の自立性を高めるという国家目標を反映している。EU諸国全体で畜産部門が農業生産額の大きな割合を占める中、エストニアのこの動きは、食料安全保障を重視する欧州の潮流と一致する。

エストニアの食料自給率に関する過去のデータでは、穀物自給率が141%（2013年）と高い水準にある一方、カロリーベースや生産額ベースでの自給率は他先進国と比較して低い傾向にある。そのため、肉類のような特定品目の国内生産能力強化は、食料安全保障の全体的なバランスを改善するために不可欠である。このウーデキュラ農場は、国内の食肉供給の安定化と、将来的な市場変動に対する緩衝材としての役割を果たすことが期待されている。2025年末の完成を目指し、最初の鶏は12月中旬に導入される予定であり、地域経済への波及効果も注目されている。