EU、犬猫の福祉向上に向けた統一基準を定める新法を採択

欧州連合（EU）は、域内全体で犬や猫の飼育環境を改善するための統一基準を定める、動物福祉に関する法改正を承認しました。この新たな法令は、ペットに対するケアの質を高めるとともに、動物の健康を害する違法な取引や繁殖慣行を根絶することを目的としています。欧州議会とEU理事会の交渉担当者によって合意されたこの決定は、欧州議会が以前から掲げていた「ペットは商品ではなく、家族の一員である」という原則を法的に確立するものです。

今回の改革の核心となるのは、義務的な個体識別制度の導入です。すべての犬および猫はマイクロチップを装着し、各国の国内データベースに登録される必要があります。これらのデータベースは、追跡可能性を完全に確保するために、統合された単一の欧州システムに接続されます。欧州議会の試算によれば、偽造されたワクチン接種証明書などが利用され、年間約13億ユーロもの収益を生み出しているとされる不正取引と闘う上で、この新規定は極めて重要です。キリスト教民主同盟（CDU）出身の欧州議会議員であるペーター・リーゼ氏は、これを「犬の闇市場を撲滅するための重要な一歩」と評価しました。

マイクロチップ装着義務の導入には、段階的なスケジュールが設定されています。ブリーダーや販売業者といった専門的な市場関係者は、施行から4年以内に全動物へのチップ装着を完了させなければなりません。一般の飼い主に対しては、より長期の移行期間が設けられており、法律の効力発生から犬は10年以内、猫は15年以内にチップ装着が義務付けられます。商業目的でEU域内に輸入される動物については、EUへの入国予定日の少なくとも5日前までにチップ装着と国内データベースへの登録が完了している必要があります。

さらに、遺伝的疾患や障害につながる繁殖方法を防ぐため、新しい法律は繁殖手法に対して厳しい制限を課しています。近親交配、具体的には親子間や完全な兄弟間での繁殖は厳しく禁止されます。加えて、短頭種（ブラキセファリー）のように動物の福祉に悪影響を及ぼす極端な身体的特徴を追求する選択的繁殖も禁止対象となります。これらの特徴を持つ動物は、ドッグショーやコンテストへの参加資格を剥奪される可能性があります。一腹あたりのメスの産子数制限や、義務的な休息期間の設定といった規定も併せて、利益追求のための動物の酷使を食い止めることを目指しています。

動物保護を強化するための追加措置として、医学的な必要性がある場合を除き、耳や尾の切断といった身体的特徴を変えるための美容整形手術は全面的に禁止されます。また、EU全域で、スパイク付き首輪や電気ショック首輪の使用も禁止されることになりました。

この新たな法的枠組みは、欧州議会において賛成457票、反対17票で承認され、その重要性が示されました。