ロンドン地下鉄ストライキ、代替交通手段の需要増と経済的損失が深刻化

9月5日からロンドン地下鉄で実施されている鉄道・海事・運輸組合（RMT）によるストライキは、首都の交通網に深刻な混乱をもたらし、代替交通手段の利用増加と数百万ポンドの経済的損失を引き起こしています。このストライキは9月11日まで続く見込みで、通勤者や観光客に多大な影響を与えています。

ストライキの原因は、RMT組合が要求する週35時間労働から32時間への短縮、賃金、疲労管理、シフトパターンの改善にあります。ロンドン交通局（TfL）は3.4%の賃上げを提示しましたが、労働時間の短縮には応じていません。TfLの顧客オペレーションディレクター、ニック・デント氏は、労働時間短縮の要求は「単に支払いが不可能」であり、数億ポンドの費用がかかると述べています。

このストライキにより、ロンドン経済は直接的に約2億3000万ポンド（約310億円）の損失を被ると推定されており、間接的な損失もさらに増加すると見られています。特に、小規模ビジネスは大きな打撃を受けており、あるカフェのオーナーは顧客数が25%減少したと述べています。UKHospitalityは、飲食・宿泊業界が約1億1000万ポンドの損失を被ると見積もっています。

地下鉄がほぼ運休する中、代替交通手段への需要が急増しています。電動キックスケーター・シェアリングサービスのLimeは、月曜日の朝のピーク時の利用が前週比で58%増加したと報告しています。Forestも同様に、月曜日の午前7時から8時の間の利用が100%増加しました。テムズ川を運行するUber Boat by Thames Clippersも、通常より混雑しており、追加便が運行されています。

ストライキの影響は空港へのアクセスにも及んでおり、ヒースロー空港へはエリザベス線が主な代替手段となっていますが、こちらも混雑しています。ガトウィック空港やルートン空港へは、テムズリンクやガトウィック・エクスプレス、サザン鉄道が利用されています。スタンステッド空港へは、スタンステッド・エクスプレスが運行しています。

この状況は、2024年7月に発足したキア・スターマー首相率いる労働党政権にとっても、経済全体に広がる産業行動への対応という課題を浮き彫りにしています。政府は、紛争の解決を求めており、労働組合とTfLに対し、交渉の場に戻るよう呼びかけています。過去にもロンドン地下鉄では、賃金、年金、人員削減などを巡って頻繁にストライキが発生しており、特に2000年から2008年の間には30回以上のストライキが行われました。今回のストライキは、労働条件や労働時間に関する現代的な課題が、都市のインフラと経済に与える影響の大きさを改めて示しています。通勤者は、可能な限り徒歩や自転車の利用を推奨されていますが、公共交通機関の混雑や遅延は避けられない状況です。