ディオール、タイの女優リンリンとオームを新たなブランドアンバサダーに起用

フランスのラグジュアリーブランド、ディオールが、タイの女優であるシリーラック・クォン（Lingling）とコーンナパット・セトラタナポン（Orm）を新たなブランドアンバサダーとして迎え入れたことを発表しました。この戦略的な人事は、世界のファッションシーンにおけるタイの映画・ドラマ界の重要性が増していることを明確に示しています。

「LingOrm」として知られるこの二人は、ドラマ『The Secret of Us』への出演で国際的な注目を集め、その後、映画『Only You』でその人気を確固たるものにしました。Channel 3に所属する両名は、女優業に加え、自身のファッションラインを展開し、すでに複数のブランドのアンバサダーを務めています。香港生まれで中国とタイで育ったシリーラック（Lingling）は語学に堪能であり、キャリアの初期にはミスコンテストにも出場していました。一方、コーンナパット（Orm）は、著名なタイの女優コイ・ナルモン・ポンスパップの娘であり、2019年に芸能界でのキャリアをスタートさせました。

特筆すべきは、2026年のパリ・ファッションウィーク（PFW）におけるディオール・コレクションのショーへのLingOrmの登場です。このイベントにおいて、彼女たちの影響力が顕著に表れました。Karla Otto、Lefty、CTZARといった主要なレポート機関のデータによると、この2026年春のシーズンにおいて、タイの女優コンビが、K-POPスターを上回るエンゲージメントメディア価値（Earned Media Value、EMV）を創出したというのです。ディオール関連の50件の投稿が、EMVランキングで彼女たちを頂点に押し上げました。

具体的な数値として、コーンナパット（Orm）は2,350万ドルのEMVを記録し、世界ランキングでトップに立ちました。シリーラック（Lingling）も2,150万ドルで2位に続き、二人の相乗効果が計り知れない価値を生み出したことが証明されました。この成果は、単なるファッションイベントへの参加を超え、アジア市場における新たなインフルエンサーの台頭を象徴しています。

今回のアンバサダー就任は、ディオールが以前より注力してきた韓国のスター中心の戦略から、成長著しいタイ市場へと関心をシフトさせている広範なトレンドの一部と見なせます。実際、ディオールは2023年にもこの地域への投資を強化しており、ドラマ『KinnPorsche』での国際的な成功を収めたタイの俳優、アポ（ナッタウィン・ワッタナキティパット）とマイル（パコーン・ロムサイトン）を男性アンバサダーとして起用しています。彼らの2025年秋冬コレクションのショーへの初登場時には、二人合わせて3,500万ドル以上のEMVをディオールにもたらしました。

このように、ディオールはアジアにおける影響力を拡大するため、タイの才能ある俳優や女優を戦略的に活用し続けており、LingOrmの起用はその最新かつ最も成功した事例と言えるでしょう。彼女たちの多岐にわたる魅力と、デジタルプラットフォームでの高い影響力は、ブランドのグローバルなリーチをさらに強固なものにすると期待されています。