トランプ前大統領によるヘルナンデス元ホンジュラス大統領への恩赦、国際社会に波紋

ドナルド・トランプ前米国大統領は、2025年11月28日に、フアン・オルランド・ヘルナンデス元ホンジュラス大統領に対する「完全かつ無条件の恩赦」を発効する意向を表明した。この大統領令に基づき、ヘルナンデス氏は2025年12月1日月曜日に連邦刑務所から釈放されたと現地メディアは報じた。ヘルナンデス氏は、2024年3月に有罪判決を受け、同年6月にニューヨークのマンハッタン連邦地裁のケビン・カステル連邦地裁判事から、米国への400トン超のコカイン密輸共謀および武器関連の罪状で45年の禁錮刑を宣告されていた。

トランプ前大統領は、恩赦の根拠として、尊敬する多くの人々がヘルナンデス元大統領が「非常に苛酷で不公正な扱い」を受けたと主張している点を挙げた。ホワイトハウス報道官であったキャロライン・レヴィット氏は、この有罪判決を前政権による「明白な過剰な訴追」であり、ヘルナンデス氏が意図的に「はめられた」と示唆し、恩赦を公に支持した。ヘルナンデス氏は2014年から2022年までホンジュラスを統治し、その在任中に政治的支援者である麻薬密売組織を保護していたことが裁判で確定している。メリック・ガーランド元司法長官は当時、ヘルナンデス氏が「大統領の地位を悪用して国を麻薬国家として運営した」と指摘していた。

この恩赦のタイミングは、ホンジュラスの11月30日の総選挙の直後であり、トランプ前大統領が保守系候補ナスリー・アスフラ氏を積極的に支持していた背景がある。選挙管理委員会（CNE）は予備集計で「技術的な引き分け」を報告し、アスフラ氏がライバルのサルバドール・ナスララ氏を515票差でリードしている状況で集計が一時中断された。トランプ前大統領は、このCNEの動きに対し、選挙の公正性を巡って以前から異議を唱えていた。

この行政措置は、外国の国家元首が重大な麻薬犯罪で有罪判決を受けた直後に自由の身となるという、極めて異例な行使として注目されている。恩赦の決定は、2025年9月に開始された米国の積極的な対麻薬軍事作戦と対照的な動きとなった。この作戦では、ベネズエラ近海での小型船舶への攻撃が含まれ、11月末までに少なくとも21隻の船舶が破壊され、80人以上の死者が報告されていると伝えられている。12月2日の閣議で、ピート・ヘグセット国防長官は、トランプ政権が「麻薬テロリスト」ネットワークの破壊を正当化するこれらの軍事行動への支持を改めて表明した。

反応は即座に二分された。上院多数党院内総務チャック・シューマー氏は、この決定が麻薬密売との戦いへのコミットメントを「茶番」にすると厳しく非難した。対照的に、ヘルナンデス氏の妻であるアナ・ガルシア・カリアス氏は12月2日に夫の釈放を確認し、トランプ前大統領に感謝の意を示した。ヘルナンデス氏の弁護士であるレナート・スタービル氏は、クライアントの安堵を伝えつつも、「麻薬テロリスト」からの安全上の懸念を理由に、直ちにホンジュラスへ帰国する予定はないと述べた。ホンジュラス国内の司法当局は、恩赦後も汚職疑惑に関する調査を継続し、必要に応じて起訴する意向を示唆しており、ヘルナンデス氏の帰国後の安全は不透明であるとの見方もある。