ホンジュラス大統領選後の「選挙クーデター」疑惑と外部干渉の指摘

2025年11月30日に投開票されたホンジュラス大統領選挙を巡り、現職のシオマラ・カストロ大統領は12月9日火曜日、選挙結果を覆そうとする「選挙クーデター」が発生したと公に主張した。この主張の背景には、選挙プロセスへの外部からの干渉、特にドナルド・トランプ前米国大統領による関与の疑惑が存在する。カストロ大統領は、トランプ前大統領の行動を「国民の意思に対する直接的な攻撃」と断じ、民主的価値の尊重が正義の要件であると訴えた。

カストロ大統領が指摘した不正の具体的な根拠として、高速票転送システム（TREP）の操作や開票用紙の改ざんが挙げられている。12月9日時点の予備集計では、トランプ前大統領が支持を表明した国民党（PN）のナスリ・アスファラ氏が1,298,835票（40.53%）で暫定的にリードしている。これに続き、自由党のサルバドル・ナスラヤ氏が1,256,428票（39.21%または39.48%）で僅差で追随し、与党リブレ党のリクシ・モンカダ氏が618,448票（19.29%または19.30%）で続いている。この僅差の展開は、選挙の透明性に対する懸念を増幅させている。

この政治的緊張には、カストロ大統領、トランプ前大統領、そして候補者であるアスファラ氏、ナスラヤ氏、モンカダ氏が関与している。また、選挙管理を担う国家選挙評議会（CNE）と、集計システムを管理するコロンビアの企業ASD社も焦点となっている。CNE議長のアナ・パオラ・ホール氏は、集計用紙の15%から16%超に技術的な不整合があり、精査が必要であることを認めている。

各当事者は異なる結論に至っている。カストロ大統領は外部干渉による選挙クーデターの発生を結論付けた一方、野党候補のナスラヤ氏は「大規模な不正」があったとして物理的な集計用紙に基づく再集計を要求している。リブレ党は選挙の無効化を求めており、結果の解釈を巡る対立が深刻化している。この状況は、2017年の物議を醸した選挙が国内の選挙結果への不信感を根付かせている背景と相まって、さらなる不安定要因となっている。

国際的な文脈として、トランプ前大統領の行動は選挙戦前から注目されていた。彼は選挙前にアスファラ氏を「自由の友」として公に支持を表明していた。さらに、トランプ前大統領は12月2日に米国刑務所から釈放された元ホンジュラス大統領フアン・オルランド・エルナンデス氏（国民党所属）の恩赦を発表するという異例の措置をとった。エルナンデス氏は麻薬密輸に関与したとして米国の裁判所から45年の懲役刑を宣告されていた人物である。

選挙結果の最終的な宣言はCNEによって12月30日までに行われる予定であり、勝者は2026年1月に就任する。現政権が2年前に台湾と断交し中国と国交を樹立した決定に対し、野党候補のナスラヤ氏とアスファラ氏は台湾との関係改善に前向きな姿勢を示しており、外交政策も争点の一つとなっている。集計システムの技術的欠陥は、主張の出所に関わらず、データ保全性への懸念を裏付けるものとなっている。

トランプ前大統領は、アスファラ氏が勝利しなければ米国がホンジュラスへの「無駄な出費をやめる」と警告し、選挙結果の改ざんを試みた場合「悲惨な結果になる」とSNSで警告を発していた。これらの発言は、国内の政治的論争に明確な外部からの影響力を示唆している。開票率が84.4%に達した時点でアスファラ氏のリードはわずかに縮小していることが示唆されているが、ナスラヤ氏側は独自の内部統計に基づき、より高い得票率を主張している。CNEは国民に対し冷静さを保つよう求めている。