ブラジル政府は、米国との貿易摩擦が激化する中、米国からの輸入品に対し50%の関税を課すトランプ政権の措置に対抗するため、国内企業支援策を発表しました。この経済戦略は、ルラ大統領政権下で打ち出されたものです。
トランプ大統領は、ブラジル前大統領ボルソナーロ氏への「魔女狩り」を理由に、ブラジルからの輸入品に50%の関税を課すと発表しました。これに対し、ブラジル政府は世界貿易機関(WTO)に提訴し、報復措置の発動も辞さない構えです。米国は昨年、ブラジルとの間で68億ドル(約1兆円)の貿易黒字を計上しており、今回の措置はブラジルの産業界から強い懸念の声が上がっています。
ブラジル政府が発表した「主権ブラジル」と名付けられた支援策には、影響を受けた国内企業への300億レアル(約55億米ドル)の信用供与、税金支払いの延期、中小企業向けの50億レアル(約9億3000万米ドル)の税額控除(2026年末まで)などが含まれます。また、米国に輸出できなくなった品目の公的機関による購入を奨励する措置も講じられます。
ルラ大統領は、この状況を「新しいものを創造する機会」と捉え、交渉による解決を望んでいます。しかし、トランプ大統領とは直接話しておらず、交渉の窓口が閉ざされていると感じているようです。ブラジル財務大臣と米国財務長官との会談がキャンセルされた件について、ブラジル側は米国の「極右勢力の連携した動き」が原因だと指摘しています。これらの貿易摩擦は、ルラ大統領の国内支持率を押し上げる要因にもなっていると分析されています。
米国がブラジルに対して貿易黒字を計上しているにもかかわらず関税措置が講じられている点は注目に値します。通常、関税は貿易赤字是正のために用いられますが、このケースではその一般的な論理が当てはまりません。外部からの圧力は、ボルソナーロ氏との対比において、ルラ大統領の国際舞台での存在感を高め、国内での支持を固める結果につながる可能性も指摘されています。
ブラジルは、国内産業保護と経済的打撃の緩和を目指し、多角的なアプローチを取っています。関税措置への対抗として、国内支援策の実施と国際的な場での解決模索を同時に進めることで、ブラジルは自国の経済的・政治的自律性を主張しています。