Apple Fitness+、AI音声合成によるローカライズを導入し、サービス提供地域を49カ国・地域へ拡大

Appleは、デジタルフィットネスサービスであるApple Fitness+の国際展開において、過去最大規模の拡大を2025年12月15日に実行しました。この戦略的な動きにより、新たに28の国と地域が追加され、サービス提供範囲は合計49カ国・地域に達しました。今回の拡大により、インド、オランダ、ポーランド、チリ、香港、ノルウェー、シンガポール、台湾、ベトナムといった重要な市場が新たにカバーされました。なお、日本でのサービス開始は2026年初頭に予定されています。

この地理的な拡大と並行して、Appleは画期的な技術革新を導入しました。それが、生成AIを活用した音声合成による吹き替え機能です。この新機能は、すでに数百に及ぶワークアウトとメディテーションコンテンツに対して、スペイン語とドイツ語での対応を開始しました。これまで、英語圏外のコンテンツは字幕のみでの提供でしたが、AI技術の導入により、ユーザーはワークアウト中に音声トラックを切り替えることが可能になりました。この合成音声は、実際のトレーナーの音響プロファイルを基にモデル化されており、ユーザーはFitnessアプリ内で好みの言語をデフォルト設定として選択できます。これは、生成AIがコンテンツのローカライゼーションに実用的な形で応用された好例と言えるでしょう。

このAI音声合成技術の核心的な特徴は、その「本物らしさ」の維持にあります。Appleが開発したこの技術は、各トレーナー特有の声の質感を忠実に再現するように設計されています。Appleのフィットネス技術担当バイスプレジデントであるジェイ・ブラニク氏は、この機能がApple Watchの各種指標とAirPods Pro 3といったデバイスとのシームレスな連携を保証すると強調しました。サービスの中核を成すApple Watchのメトリクスに基づいたモチベーション維持の要素が、新しい音声オプションによって損なわれることなく提供される点が重要です。

さらに、Appleはコンテンツの拡充にも注力しました。フィットネスサービス全体で、全く新しい音楽ジャンルとしてK-POPが追加され、サイクリングやトレッドミルといったあらゆる種類のワークアウトで利用可能になりました。現在、このサービスは5分から45分まで、12種類の異なるワークアウトタイプを提供しており、iPhone、iPad、Apple TVといった主要なAppleデバイスでアクセスできます。プラットフォームの提供地域が倍以上に増加した今回の展開は、急速に成長するフィットネス技術市場において、Appleが加入者基盤を積極的に拡大していくという強い意向を示唆しています。