中国の宇宙飛行士3名が、宇宙ステーション「天宮」での6ヶ月間の任務を無事に完了しました。この重要なミッションでは、最新世代の宇宙服の性能評価と、多岐にわたる科学研究が実施されました。宇宙飛行士たちは2025年4月25日に「神舟XX」宇宙船で打ち上げられ、同日「天宮」に到着後、6ヶ月間の滞在を開始しました。
任務の初期段階で、宇宙飛行士たちは「天舟9号」貨物宇宙船によって運ばれた2種類の新型宇宙服の機能試験を行いました。これらの第二世代宇宙服は、中国のこれまでの21回の船外活動で用いられてきた第一世代宇宙服に取って代わるものです。開発者によると、新しい宇宙服は耐用年数、安全性、信頼性、操作性、メンテナンスの容易さにおいて顕著な進歩を遂げており、過去の運用データと42名の宇宙飛行士による21回の船外活動の経験を基に改良され、耐用年数は4年、20回の船外活動に対応可能です。
宇宙服の準備と並行して、宇宙飛行士たちは数多くの科学研究プロジェクトにも従事しました。注目されるのは、チップ技術を活用し、宇宙環境が人間の脳血管および脳機能に与える影響を調査する研究です。この研究は、長期宇宙滞在における健康リスクの予測と戦略策定を目的としています。宇宙飛行が脳の構造や機能に影響を及ぼす可能性が指摘される中、この「臓器チップ」技術を用いたアプローチは、細胞、組織、器官レベルでの脳血管関門と脳機能への影響を詳細に分析する上で極めて重要です。さらに、骨代謝と腸内細菌叢代謝に関する研究も進められました。宇宙飛行士の陳東氏は、ラマンスペクトロメーターを用いて尿サンプルを分析し、呼吸器内の微生物が呼吸器の健康に与える影響を調べるためのカプセルサンプルも採取しました。これらのサンプルは、さらなる詳細な分析のために地球へ持ち帰られます。
宇宙船システム関連では、宇宙飛行士たちは船内の微生物制御試験を実施し、消毒の前後の細菌レベルを測定しました。また、微生物燃料電池廃水浄化システムを検証するための装置を設置し、燃焼実験に使用されるバーナーの交換作業も行いました。加えて、トラックベースの複合トレーニング装置を用いた訓練や、「天宮」実験モジュール内に専用冷蔵庫を設置・試験する作業も遂行されました。
「天宮」宇宙ステーションは、中国の宇宙開発における中核施設であり、長期的な宇宙滞在と先進的な科学技術研究を推進する国家宇宙実験室としての役割を担っています。2022年末に主要構造が完成したこのステーションは、中国が掲げる2030年までの有人月面着陸計画をはじめとする野心的な宇宙開発目標達成のための重要な基盤となっています。今回の任務で得られた科学的成果と技術的知見は、将来の深宇宙探査に向けた宇宙飛行士の健康管理や、宇宙環境下での技術革新に不可欠な貢献を果たすでしょう。宇宙飛行士たちの揺るぎない探求心と献身的な活動は、人類の宇宙への理解をさらに深めるものです。