宇宙デブリ衝突の疑いで帰還が延期された神舟20号乗組員3名、無事地球に帰還

中国有人宇宙機関（CMSA）は、天宮宇宙ステーションに滞在していた神舟20号の乗組員3名、陳冬、陳中瑞、王傑の各宇宙飛行士が、2025年11月14日に地球へ安全に帰還したと発表した。当初、彼らの帰還は2025年11月5日に予定されていたが、帰還に使用する神舟20号宇宙船が軌道上の微小デブリと衝突した可能性が浮上したため、安全確保を最優先として延期されていた。

CMSAは、帰還延期後、衝突の疑いに関する影響分析とリスク評価を直ちに実施し、乗組員の生命と健康の安全が確認された後に帰還ミッションを再開した。神舟20号のクルーは2025年4月から天宮ステーションに滞在し、約6ヶ月間のミッションを遂行した。彼らの任務期間中、交代要員を乗せた神舟21号が10月31日に打ち上げられ、ステーションに到着していた。神舟21号の乗組員は、帰還前の期間、ステーション内で科学研究活動を継続し、新クルーとの引き継ぎ作業を並行して行った。

今回の帰還遅延は、現在運用中の天宮宇宙ステーション（2022年11月に3モジュール構成が完成）の運用における、宇宙デブリの脅威という現実的な課題を改めて浮き彫りにした。一部の専門家は、デブリ衝突が連鎖的に軌道利用を不可能にする「ケスラーシンドローム」の懸念を示唆している。天宮ステーションは中国の宇宙開発における中核であり、継続的な有人ミッションを支えている。

中国の宇宙開発は、天宮ステーションの安定運用に留まらず、より野心的な目標を掲げている。CMSAは、2030年までに中国初の有人月面着陸を実現するという目標を堅持しており、そのための輸送ロケット「長征10号」や有人宇宙船「夢舟」、着陸機「攬月」などの主要機器の開発・試作が順調に進んでいることが報告されている。さらに、来年の重要計画として、宇宙飛行士の交代ミッションである神舟22号および神舟23号に加え、将来の有人月探査に用いられる「夢舟」の本格的なミッションが示唆されている。

帰還を終えた神舟20号の宇宙船本体は、現在も軌道上に残存しており、CMSAはデブリ衝突の有無と機体の将来的な状態について、引き続き影響評価を進めている。この一連の出来事は、宇宙活動の持続可能性を確保するための安全対策の重要性を、国際的な宇宙機関に対して再認識させるものとなった。