欧州宇宙機関(ESA)は、土星の衛星エンセラダスへの生命探査ミッションを計画しています。このミッションは、エンセラダスの地下海と間欠泉が生命を維持する可能性を調査することを主な目的としています。ESAの「ボヤージュ2050」プログラムの一環として、2040年代の打ち上げを目指しており、2050年代に土星系に到着する予定です。ミッションには、エンセラダスのプルーム(間欠泉からの噴出物)から物質を採取するオービターと、地表を調査するランダーが含まれます。この探査は、エンセラダスの地下海が生命を宿す可能性を秘めているのかという根本的な問いに答えることを目指しています。
エンセラダスは、その地下の海と、水蒸気や有機分子を宇宙空間に噴出する間欠泉により、科学的な関心を集めています。カッシーニ宇宙船のデータによると、エンセラダスの南極付近には厚さ約10kmの広大な地下淡水オーシャンが存在する証拠が発見されています。さらに、最近の研究では、エンセラダスの海には生命にとって不可欠なリンが含まれていることが確認されており、生命存在の可能性をさらに高めています。エンセラダスのプルームは、水蒸気だけでなく、水素、二酸化炭素、メタン、アンモニアなどのガスも含まれており、これらは地下の海が生命を育むための化学エネルギー源を持っている可能性を示唆しています。
「ボヤージュ2050」プログラムは、2035年から2050年までのESAの科学プログラムを対象としており、巨大惑星の衛星、温帯系外惑星、初期宇宙の探査に焦点を当てています。エンセラダスへのミッションは、このプログラムにおける最初の大型ミッションの一つとなる予定です。しかし、最近の研究では、プルーム中の有機分子の一部は、地下の海からではなく、表面での放射線によって形成された可能性も指摘されており、生命探査における複雑さが増しています。このミッションは、エンセラダスの地下の海が生命を育む条件を満たしているのか、そして地球外生命の存在の可能性を探る上で、重要な一歩となります。ESAは、この野心的な探査を通じて、太陽系における生命の起源と普遍性に関する理解を深めることを目指しています。