SpaceXが開発を進める次世代巨大ロケット「Starship」は、最近実施された重要な試験飛行において、スーパーヘビーブースターに搭載された33基全てのラプターエンジンを同時に点火させるという偉業を達成しました。この試験飛行は、2025年8月26日に実施されたStarshipの10回目の飛行試験であり、これまでの飛行で得られたデータに基づき、エンジンの性能や機体の耐久性向上を目指したものです。
スーパーヘビーブースターは、33基のラプターエンジンを搭載し、打ち上げ時には約7,700トン(1,700万ポンド)という、これまでに開発されたロケットの中で最も強力な推力を発生させます。これはNASAのスペース・ローンチ・システム(SLS)ロケットの約2倍、アポロ計画で使用されたサターンVロケットの推力を大きく上回るものです。各ラプターエンジンは、単体でボーイング747旅客機の4基のエンジンを凌駕する推力を生み出すとされています。
ラプターエンジンは、SpaceXが開発した最先端のメタン・酸素を燃料とするエンジンであり、ラプター1からラプター2、そして最新のラプター3へと改良が進むにつれて、推力と効率が飛躍的に向上しています。特にラプター3は、設計の簡素化と革新的な冷却技術の導入により、エンジンの質量と複雑さを低減させ、ヒートシールドが不要になるほどの性能向上を遂げています。
イーロン・マスク氏は、将来的にStarship V4では42基のラプターエンジンを搭載する計画も明らかにしています。このエンジンの追加と機体の改良により、さらに重いペイロードの輸送能力を高め、月や火星への深宇宙ミッションの実現可能性を大きく広げることが期待されています。今回の試験飛行の成功は、宇宙開発のコストを劇的に削減し、人類の活動圏を宇宙へと拡大するという壮大な目標達成を加速させるものと分析されています。
2025年8月26日の10回目の試験飛行では、ペイロードドアの展開や宇宙空間でのエンジン再点火といった、これまでの飛行では達成されていなかった重要なマイルストーンも成功裏に収められました。これらの進歩は、Starshipの宇宙空間での運用能力を実証するものです。Starshipの再利用性は、打ち上げコストを現在の数分の一にまで削減する可能性を秘めており、宇宙旅行や衛星コンステレーションの展開、さらには惑星間での資源探査といった新たな商業機会を生み出すと期待されています。