2025年9月3日、スペースXのドラゴン貨物宇宙船は、国際宇宙ステーション(ISS)の軌道高度を上昇させるための再ブースト操作を成功裏に実施しました。このミッションは、米国の宇宙船がISSの軌道維持に貢献した初めての事例となります。
ISSは約400キロメートルの高度を周回していますが、大気抵抗により徐々に高度が低下するため、定期的な再ブーストが必要です。これまで主にロシアのプログレス宇宙船がこの役割を担ってきましたが、ロシアが2028年にもISS計画から離脱する可能性が示唆されていることから、NASAは代替手段の確保を進めています。
今回の再ブーストは、8月24日に打ち上げられたドラゴン宇宙船に搭載された独立した推進システムを備えた「ブーストキット」を使用して行われました。このキットにはドラコエンジン2基が搭載されており、9月3日の初期テストでは、ISSの軌道高度を約1.6キロメートル引き上げ、軌道を高度約419.9キロメートルから412キロメートルの範囲に調整しました。このブーストキットは、2025年秋にかけて予定されている一連のより長時間の噴射を通じて、ISSの軌道高度を維持するのに役立ちます。
ドラゴン宇宙船は、5,000ポンド(約2,270キログラム)以上の物資、科学実験装置、およびハードウェアをISSに届けました。このミッションには、ISSの軌道維持能力の実証に加え、将来的にISSを制御された方法で地球に再突入させるための「米国軌道離脱用宇宙船(US Deorbit Vehicle)」の開発につながる重要な技術実証が含まれています。スペースXは2024年7月に、このISSの最終的な軌道離脱を担当する契約を結んでおり、今回の再ブースト能力はそのための重要な一歩となります。
ドラゴン宇宙船は、2025年12月下旬または2026年1月上旬までISSにドッキングしたまま、研究サンプルや貨物を地球に持ち帰る予定です。今回の成功は、NASAとスペースXの協力関係における重要な成果であり、ISSの長期的な運用と将来の宇宙探査に向けた重要な基盤を築くものです。