シエラ・スペース、ドリームチェイサー初飛行に向け重要試験を完了

シエラ・スペース社が開発を進める再利用可能な宇宙往還機「ドリームチェイサー」の初飛行が2026年後半に予定される中、同社の宇宙船「テネシティ」は、一連の極めて重要な飛行前試験を成功裏に完了させた。この進展は、NASAの商業補給サービス2（CRS-2）契約に基づくデモンストレーションミッションに向けた重要な一歩を示すものである。

試験はNASAのケネディ宇宙センター（KSC）で集中的に実施され、特に宇宙空間の過酷な電波環境下での全電気系統の機能検証を目的とした電磁干渉および電磁両立性（EMI/EMC）評価がNASAのスペースシステム処理施設（SSPF）で実施された。さらに、テネシティはKSCおよびスペース・フロリダの発射着陸施設（LLF）において、フレイトライナー・カスケイディア・トラックによる高速牽引試験を経験した。この試験は滑走路着陸のダイナミクスをシミュレートし、着陸操作中の自律航法パラメーターの検証と重要なデータ取得を目的としていた。

これらの技術検証に加え、コロラド州ルイビルにあるミッションコントロールと、NASAの追跡データ中継衛星システム（TDRSS）ネットワークを介した宇宙船との間で、リアルタイムのコマンドおよびテレメトリー転送が成功裏に実証された。これらのマイルストーン達成を受け、シエラ・スペースは2025年12月に最終的な音響試験を実施する予定であり、その後、国家安全保障用途に向けた改修作業がコロラド州で検討・実施される見込みである。

ドリームチェイサーは、元々NASAの商業乗員開発（CCDev）プログラムの一環として構想されたが、2014年に選定されずカーゴ専用機へと方向転換した経緯がある。CRS-2契約の下、当初は国際宇宙ステーション（ISS）への最低7回の物資補給ミッションが義務付けられていたが、NASAとの契約変更により、初飛行はISSへのドッキングを伴わないフリーフライヤー・デモンストレーションへと移行した。初飛行はユナイテッド・ローンチ・アライアンス（ULA）のバルカン・セントール・ロケットで打ち上げられ、地球低軌道への到達が目標とされている。

帰還時の着陸場所は、当初検討されていたKSCのLLFから、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地の滑走路に変更された。この着陸方式は再利用性を高め、ペイロードへの迅速なアクセスを可能にするため、防衛ロジスティクスや衛星展開ミッションにおいて有力な候補と見なされている。NASAのダナ・ウェイゲルISSプログラムマネージャーは、新しい宇宙輸送システムの開発には計画以上の時間を要する可能性に言及し、今回のデモンストレーション飛行への移行は、ISSの2030年の軌道離脱に向けたNASAの柔軟性確保に寄与するものと説明した。

これらの技術的検証の成功は、シエラ・スペースが民間および国家安全保障ミッションのために多用途で再利用可能な宇宙船の開発に注力している姿勢を明確に示している。テネシティの同型機である「リヴァレンス」の生産は、テネシティの初ミッションに注力するため一時停止されている。シエラ・スペースは、このデモンストレーション飛行の成功を受けて、将来的にISSへの補給ミッションを発注するオプションをNASAが保持していると述べている。