オハイオ州立大学のエンジニアが開発した液体ウラン核ロケットが宇宙旅行を加速させる

編集者: Tetiana Martynovska 17

オハイオ州立大学のエンジニアチームが、宇宙探査の未来を塗り替える可能性を秘めた革新的な核推進システム「遠心核熱ロケット(CNTR)」を開発しています。このシステムは、液体ウランを使用してロケット推進剤を直接加熱するという画期的なアプローチを採用しており、従来の固体燃料要素を用いた方式と比較して、ロケットの性能を大幅に向上させ、運用上のリスクを低減することを目指しています。

CNTRプロジェクトの核心は、宇宙ミッションにおける推進エンジンの効率向上にあります。同大学のディーン・ワン准教授は、月や月周回軌道へのミッションにおける核熱推進への関心の高まりを指摘し、現在の化学エンジンではこれらの野心的な目標達成に限界があることを強調しました。化学エンジンは、その推力と推進剤の消費量に制約があり、例えば冥王星探査機ニュー・ホライズンズが9年を要したように、ミッション期間が長くなりがちです。このため、将来の深宇宙探査においては、旅行時間を短縮し、ペイロード容量を増大させるための先進的な推進システムが不可欠となっています。

CNTRは、現在の化学エンジンの効率を約2倍にすることを目指しています。化学エンジンが約450秒の比推力を達成するのに対し、1960年代に試験された核熱推進エンジンは約900秒に達しました。CNTRはこの数値をさらに上回ると予測されており、より高速な宇宙旅行と燃料消費量の削減を実現することで、宇宙旅行のあり方を一変させる可能性があります。この技術により、火星への片道旅行が6ヶ月に短縮される可能性も示唆されており、往復ミッションも1年以内に完了できるかもしれません。これは、宇宙飛行士が長期間宇宙空間に滞在することによる健康リスク、例えば骨密度の低下やがんリスクの増加を最小限に抑える上で極めて重要です。

核熱推進(NTP)の概念自体は古くから存在し、アメリカでは1950年代からプロジェクト・ローバーやNERVAプログラム(1961年~1973年)を通じて開発が進められてきました。これらのプログラムは、化学推進剤よりもはるかに高い効率を持つエンジンの可能性を示しましたが、予算の制約などから実用化には至りませんでした。しかし、近年、NASAやDARPA(国防高等研究計画局)によるDRACOプログラムなどを通じて、NTPへの関心が再燃しており、次世代の宇宙探査に向けた重要な技術として位置づけられています。

CNTRは、その革新性ゆえに、安定した運用、燃料の損失最小化、エンジン故障の防止といった工学的課題に直面しています。ワン准教授もこれらの課題を認識しており、物理学的な原理は確立されているものの、技術的なハードルは依然として存在すると述べています。CNTRのコンセプトは、今後5年間で設計段階の準備が整うと予想されており、最終的な実験室での実証試験が将来の核熱推進技術の方向性を示すものとなるでしょう。オハイオ州立大学は、2025年4月に開催された空軍研究実験室(AFRL)の航空宇宙推進アウトリーチプログラム(APOP)への参加を通じて、航空宇宙分野における革新へのコミットメントを示しており、この分野の研究開発を継続的に推進しています。

2025年9月17日現在、CNTRプロジェクトは設計準備段階に向けて順調に進んでおり、技術的な課題への取り組みが続けられています。このプロジェクトは、教員、学生、産業界のパートナーからなる協力チームによって推進されており、核熱推進を通じて宇宙旅行の進歩に貢献することを目指しています。

ソース元

  • SpaceDaily

  • Ohio State launches nuclear propulsion research collaboration focused on space flight

  • University students to present new aerospace propulsion concepts at Air Force Museum

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