東北大学のプラズマ推進機、宇宙デブリ除去に新たな希望

編集者: Tetiana Martynovska 17

地球低軌道(LEO)における宇宙デブリ(宇宙ゴミ)の増加は、運用中の衛星や国際宇宙ステーション(ISS)にとって深刻な脅威となっています。秒速7キロメートルを超える高速で移動するこれらのデブリは、たとえ小さな破片であっても衛星に壊滅的な損傷を与える可能性があります。この問題の悪化は、衝突の連鎖反応を引き起こし、軌道空間を事実上使用不能にする「ケスラーシンドローム」へと繋がる懸念が指摘されています。

このような状況に対し、東北大学の研究者たちが革新的な解決策を提示しました。同大学大学院工学研究科の高橋和貴准教授は、「双方向プラズマ噴射型無電極プラズマ推進機」を開発しました。この先進的な技術は、デブリ除去衛星に搭載され、対象となるデブリに直接接触することなく、安全に軌道外へ排出することを目指しています。従来のロボットアームやネットを用いた方法とは異なり、非接触方式を採用することで、予測不能な回転をするデブリとの接触によるリスクや、デブリのさらなる拡散を防ぐことが期待されています。

この推進機の核心は、プラズマを二つの反対方向に同時に噴射する仕組みにあります。これにより、デブリを減速させるための推力と、推進機自身の位置を安定させるための反作用が相殺されます。燃料には、キセノンに代わるより入手しやすいアルゴンが使用されており、さらに「カスプ磁場」と呼ばれる特殊な磁場配位を導入することで、プラズマの閉じ込めと効率が向上しています。

実験室での試験では、この推進機は5キロワット(kW)の入力電力で約25ミリニュートン(mN)の減速力を実証しました。これは、1トンクラスのデブリを100日間で軌道離脱させるために必要とされる約30 mNという値に迫るものです。この成果は、2025年8月20日に科学雑誌「Scientific Reports」に掲載され、宇宙デブリ除去技術の実現に向けた大きな一歩として注目されています。

現在、宇宙空間でのプラズマ挙動や、システムのスケーラビリティといった課題克服に向けたさらなる研究開発が進められています。将来的には、大型の宇宙シミュレーションチャンバーでの試験や、実際の軌道上での実証実験が計画されています。この技術が実用化されれば、宇宙空間の持続可能性を高め、将来世代が安全に宇宙を探査・利用できる環境を維持するための重要な貢献となるでしょう。これは、人類の宇宙活動の未来をより明るく照らす、希望の光と言えます。

ソース元

  • Space.com

  • Phys.org

  • The Watchers

  • PMC

  • Tohoku University

  • EurekAlert!

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