ニコラ・ジェスキエールが手掛けるルイ・ヴィトンの2026年春夏コレクションが、2025年9月30日、パリの歴史的なルーヴル美術館にて発表されました。コレクションのタイトルは「ランデヴー(L'Appartement)」で、旅のエスプリを探求し、時代を超えたエレガンスとモダニティを融合させたデザインが特徴です。コレクションは、アンヌ・ドートリッシュの修復された夏の居室という、数世紀にわたる建築様式が息づくユニークな舞台で披露されました。
会場には、ルイ・ヴィトンのアンバサダーであるゼンデイヤが印象的なシルバーの装いで登場したほか、ブリジット・マクロン、BLACKPINKのLISA、エマ・ストーン、アナ・デ・アルマス、マリーナ・フォイス、ノエミ・メルラン、レア・セドゥといった著名人が集結し、ラグジュアリーで親密な雰囲気を演出しました。モデルたちは、それぞれの部屋が異なる生活の一場面や親密さを呼び起こすような、前室、控えの間、サロン、浴室、書斎、冬の庭園、そして舞踏室といった空間を巡りました。
コレクションでは、ブドワール風に再解釈されたシルクドレス、カラフルな宝石で飾られたスリーブレスコート、そして繊細なストライプのパンツと合わせた精巧なトップスなどが登場しました。花や蔓のモチーフが刺繍されたドレスも披露され、デニムと合わせたスタイリングも見られました。柔らかなトーンと流れるようなファブリックを基調としたカラーパレットは、パーソナルなラグジュアリーと自己表現の感覚を強調しています。ショーのサウンドトラックには、ケイト・ブランシェットがトーキング・ヘッズの「This Must Be the Place」の歌詞を朗読した特別収録のナレーションが使用されました。この発表は、パリ・ファッションウィークにおけるヘリテージ、ファッション、そして現代文化を融合させた重要な瞬間となりました。
今回のコレクションは、17世紀のアンヌ・ドートリッシュの夏の居室という歴史的な空間で開催されたことで、過去と現在が融合した独特の世界観を創り出しました。この空間は、1655年にルイ・ル・ヴォーによって建築され、ルイ14世が母のために夏の居室として改装を命じたものです。ルーヴル美術館のこれらの歴史的空間は、2027年に古代ローマコレクションの展示スペースとなる予定ですが、今回のショーはその壮大な空間をファッションの舞台として活用しました。
さらに、ショーのクライマックスを彩ったのは、ケイト・ブランシェットによるトーキング・ヘッズの楽曲「This Must Be the Place」の朗読でした。この選曲は、コレクションのテーマである「旅」や「帰る場所」といった感覚を、より深く、詩的に表現しました。ジェスキエールは、このコレクションについて「自宅の快適さから感じられる静けさを表現したかった。現代では、自宅で洗練された装いをすることができる。ジョギングパンツを着るだけではない」と語っています。これは、ファッションが単なる外見だけでなく、個人の内面的な充足感や自己表現と深く結びついていることを示唆しています。