中部ジャワ州の豪雨による地滑り、捜索難航と恒久対策の課題

2025年11月13日の夜、インドネシア中部ジャワ州は長期間にわたる激しい降雨により、甚大な地滑り災害に見舞われた。この自然災害は特にチラカップ県で深刻であり、土壌の飽和が地形の不安定化を招き、公式発表によれば少なくとも2名が死亡、21名が行方不明となっている。この地域は過去にも水災害の多発地帯であり、2014年12月にはバンジャルヌガラ県ジェムブルンで死者93名、行方不明者23名を出す地滑りが発生している。

現在、国家防災庁（BNPB）を含む合同捜索救助チームが活動を続けているが、捜索は極めて困難な状況にある。絶え間ない降雨と現場を覆う濃霧が視界を著しく制限し、アクセスが困難な被災地域への進入を阻んでいる。災害対応の専門家が重視する生存者救出の「ゴールデンアワー」において、不安定な地盤状況が大きな障壁となっている。BNPBは重機を投入し救助プロセスを加速させているものの、二次災害のリスク管理が喫緊の課題として浮上している。

国家防災庁（BNPB）は、緊急対応完了後、地滑り多発地域に居住する28世帯に対し速やかな移転を実施する方針を固めている。BNPB長官のスハリャント氏によれば、今回の地滑りの原因となった不安定な地盤構造を鑑みると、住民の長期的な安全確保のためには移転が不可欠であるとの見解が示されている。地方政府は代替の移転先を確保済みであり、これは過去の災害対応の教訓を踏まえた予防的措置の強化の一環である。インドネシアでは一般的に11月から3月が雨季とされ、この期間は激しい降雨に見舞われやすく、インフラの脆弱性と相まって災害リスクが高まる傾向にある。

今回の事態は、インドネシアの治水・水災害防災における構造的な課題を改めて浮き彫りにした。BNPBのデータ分析では、過去10年間の災害発生件数のうち、洪水と地滑り関連が半数を占め、特にジャワ島はその多発地域として特定されている。災害リスクの理解と共有の不足、省庁間の連携の課題、そして災害軽減策がプロジェクト志向に偏り、真の予防視点が欠如している点が、災害対応能力向上のための主要な課題として指摘されている。今回のチラカップでの悲劇は、恒久的なハザード・リスクマップの精度向上と、地域コミュニティの防災活動の強化が、将来的な被害を最小限に抑える鍵であることを示唆している。