北極の化石層が示す、大量絶滅後の海洋生態系の急速な回復

国際的な研究チームは2025年11月13日、スヴァールバル諸島の一部である北極の島、スピッツベルゲン島において、3万点を超える海洋化石を発見したと発表しました。これらの遺骸は約2億4900万年前のものと特定されており、地球上の海洋種の90%以上を絶滅させた壊滅的なペルム紀末の大量絶滅（EPME）、通称「大絶滅」からわずか数百万年後の生命の様子を鮮明に捉えています。

この膨大なコレクションは、36平方メートルにわたる集中したボーンベッドから回収されました。中には、歯、骨、そして糞石（コプロライト）が含まれており、爬虫類、両生類、硬骨魚、サメといった古代の豊かな海洋生物群集を構成しています。発掘作業によって得られた化石物質の総重量は800キログラムを超えました。この驚くべき発見は、海洋コミュニティの回復には800万年近くかかるとする従来の推定に異議を唱えるものであり、科学界に新たな議論を巻き起こしています。

化石群に含まれる種の多様性は極めて注目に値します。具体的には、食物連鎖の頂点に位置した魚竜（イクチオサウルス類）の遺骸や、より小型の魚鰭類（イクチオプテリギウス類）であるグリッピア・ロンギロストリス（Grippia longirostris）、さらには海生両生類であるアファネランマ（Aphaneramma）などが確認されています。これらの多種多様な生物の存在は、すでに複雑な栄養ネットワークが確立されていたことを示唆しています。この複雑な生態系の構築は、大絶滅後、わずか300万年という短期間で生物多様性が急速に復活した証拠であり、生命の驚異的な回復力を物語っています。

本研究は、オスロ大学自然史博物館とストックホルムのスウェーデン自然史博物館の科学者たちが共同で実施したものであり、現在、標本はこれらの施設に収蔵されています。化石自体は2015年に最初に発見されましたが、その後の発掘と詳細な分析には約10年近い歳月を要しました。高度な層序学的研究を通じて行われた正確な年代測定の結果、このボーンベッドは中期前期三畳紀、特にスパシアン初期に位置づけられることが判明しました。

この画期的な成果は、『サイエンス』誌に「Earliest oceanic tetrapod ecosystem reveals rapid complexification of Triassic marine communities」（最古の海洋四肢動物生態系が明らかにする三畳紀海洋コミュニティの急速な複雑化）というタイトルで発表されました。スピッツベルゲン島の化石群が示す種の豊富さは、三畳紀初期の既知の海洋脊椎動物群集の中でも群を抜いており、最も種が豊富なグループの一つとされています。この急速な「生態系のリセット」は、基礎的な生態学的ニッチを確立し、地球規模の破局後の生命のレジリエンスを強調しています。これは、恐竜時代の幕開けにおける海洋生態系の初期の姿を、比類のない視点から提供するものです。