ケニアはサイの保護活動において顕著な成果を上げており、サイの個体数は着実に増加しています。2017年には745頭だったクロサイは、2024年には1,059頭に増加しました。シロサイも同期間に513頭から1,041頭へと倍増し、長年にわたる献身的な保護活動の効果を示しています。
これらの肯定的な傾向にもかかわらず、密猟は依然としてサイの個体群にとって深刻な脅威です。2025年5月には、2.2キログラム、約15,444米ドル相当のサイの角を押収する事件が発生し、2名が逮捕されました。この事件は、野生生物当局が直面する継続的な課題を浮き彫りにしています。サイの角はアジアや中東の一部地域で伝統的な薬効があると信じられており、その需要が密猟を助長する一因となっています。密猟者は角1キログラムあたり約60万円で売り、中間業者はそれを120万円で取引し、最終的にはアジアの国々で3倍以上の価格で取引されることもあります。角1本で約420万円の価値があるため、密猟者にとって大きなインセンティブとなっています。
ケニア野生生物公社(KWS)は、クロサイ回復・行動計画などの保護戦略を通じて、法執行機関の強化、生息地の拡大、先進的な監視技術の導入に注力しています。これらの取り組みは、密猟との戦いにおいて重要な役割を果たしています。2014年には、密猟者に対する罰則が強化され、最長5年の懲役または高額な罰金が科されるようになり、これは密猟抑止力として機能しています。
特筆すべきは、2020年にはケニア全土でサイの密猟がゼロであったという記録です。これは1999年以来21年ぶりの快挙であり、保護活動の大きなマイルストーンとなりました。この成功は、国際的な移動が制限されたコロナ禍の影響も一部あったとされていますが、継続的な啓発活動や地域社会との連携が、密猟者や野生生物犯罪に関する情報の収集と迅速な対策に繋がっています。
サイの保護には多大なコストがかかっており、例えばナクル湖国立公園では、サイの保護のみに月額約83万円、公園全体の監視に月額約36万円が費やされており、合計で月額120万円近くが密猟対策に充てられています。このような状況下でも、ケニアは密猟防止におけるアフリカのモデル国として認識されています。レンジャーたちは、しばしば「戦争」と表現される厳しい状況下で、最新の装備を駆使し、サイを密猟者から守るために昼夜を問わず活動しています。これらの活動は、単に個体数を増やすだけでなく、生態系の健全性を維持し、地球上の生命の多様性を次世代に引き継ぐという、より大きな目的への貢献と言えます。ケニアのサイ保護への取り組みは、自然との調和を目指す人間の努力が、生命の繁栄という形で実を結ぶ可能性を示唆しています。