中国の施設から救出された2頭のベルーガ、リトル・グレイとリトル・ホワイトは、アイスランドのシーライフ・トラスト・ベルーガ・クジラ・サンクチュアリで新しい生活に適応中です。このサンクチュアリはベルーガのために世界で初めて設立されたものです。2025年9月現在、2頭は健康状態も良好で、ケアチームと積極的に交流しています。
サンクチュアリ内の広大な海域への完全な放流は、生息地の整備遅れにより2026年春まで延長されました。リトル・グレイとリトル・ホワイトは、「リトル・ステップス」プログラムを通じて、亜寒帯の環境で生きるために必要な体力とスキルを着実に築いています。このプログラムは、ホエール・アンド・ドルフィン・コンサベーション（WDC）との協力により、飼育されていた海洋哺乳類の回復に向けた重要な一歩を示しています。
ベルーガはかつて水族館や海洋公園で展示されていましたが、人工的な環境は彼らの複雑なニーズを満たせず、ストレスや病気、そして早すぎる死につながることが少なくありませんでした。野生では最大60年生きるベルーガも、飼育下では30歳を迎える前に命を落とすケースが多く報告されています。彼らは広大な海を移動し、社会的な群れで生活しますが、飼育下の限られた空間では本来の行動様式を発揮することが困難です。
今回のアイスランドのサンクチュアリは、そのような状況にあったベルーガに、より自然に近い環境を提供することを目的としています。サンクチュアリはアイスランド南岸のウェストマン諸島にあるケッツヴィーク湾に位置し、約32,000平方メートルの広さと10メートルの水深を持つ自然の入り江を利用しています。ここでは、ベルーガが泳ぎ、潜り、探索するための理想的な空間が提供されています。リハビリテーションの過程では、海での生息に必要なスキルを練習するための海中ケージでの順応訓練が行われます。この取り組みは、飼育されていた他の多くのクジラやイルカの福祉向上にも繋がる可能性を秘めており、リトル・グレイとリトル・ホワイトの順調な適応は、海洋哺乳類の保護と回復における新たな希望となっています。