9月22日、暗号資産(仮想通貨)市場は全体で約2%下落し、総時価総額は約3兆9000億ドルとなりました。ビットコイン(BTC)は一時11万2000ドル台まで値を下げ、週初来の上昇分を帳消しにする動きを見せました。この下落は、主にロングポジションの清算が約17億ドルに達したことが加速要因となり、今年最大のロングポジション清算イベントとなりました。
市場は当初、連邦準備制度理事会(FRB)による25ベーシスポイントの利下げ発表に対し、一時的に好意的な反応を示していました。しかし、この動きもすぐに勢いを失い、その後、破産した暗号資産取引所FTXが債権者への3回目の分配として約16億ドルを9月30日に実施すると発表したことが、市場センチメントにさらなる影響を与えました。この発表を受け、ソーシャルメディア上のセンチメントは慎重なものへと転じ、ビットコイン価格の下落に賭けるトレーダーが増加しました。
Santimentのような市場分析企業は、より多くのトレーダーがビットコイン価格の下落に賭けており、ソーシャルメディア上で否定的な見方が広がっていると指摘しています。これは、市場参加者の間で不確実性が高まっていることを示唆しています。
10X Researchのアナリストは、このような急激な清算イベントはしばしば市場の一時的な底を形成し、その後の反発の可能性を高めると分析しています。彼らは、トレーダーに対し、ポジション構造やテクニカルシグナル、市場価格を慎重に評価した上でディップ(押し目)買いを検討するよう促しています。また、FG Nexusのデジタルアセット部門CEOであるMaja Vujinovic氏は、今回の17億ドルの清算はファンダメンタルズの崩壊ではなく、過剰なレバレッジの解消によるものだと指摘しています。彼女は、このような「レバレッジの洗い流し」は、しばしばより健全な基盤を形成し、その後に続く市場の安定化や上昇トレンドの前兆となりうるとの見解を示しています。現在のスポット需要、ETFフロー、ステーブルコインの基盤が健全である限り、市場はさらなる下落よりも一時的な調整局面に入る可能性が高いと見ています。
FRBの利下げは、一般的に市場への流動性を供給し、リスク資産への投資意欲を高める傾向があります。しかし、今回の25ベーシスポイントという控えめな利下げは、市場参加者に慎重な姿勢を促す要因ともなりました。過去の事例では、利下げ後に暗号資産市場が活況を呈する傾向が見られましたが、今回の市場の反応は、より複雑な要因が絡み合っていることを示唆しています。
FTXからの分配金についても、債権者への支払いが現在の市場価格ではなく、2022年当時の価格に基づいて計算されているという評価方法に関する議論があります。この点は、一部の債権者にとっては不満の種となっていますが、市場全体への影響は、債権者がどのように資金を再配分するかによって異なると考えられます。一部のアナリストは、新たな流動性が市場に戻ってくる可能性を指摘する一方、大量の換金売りが出るリスクも警告しています。
市場の動向は、マクロ経済の指標、中央銀行の金融政策、そして個別のプロジェクトの発表など、様々な要素によって常に変化しています。今回の出来事は、市場がレバレッジの調整を行い、より持続可能な成長に向けた基盤を再構築する機会と捉えることもできます。トレーダーや投資家は、短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、市場全体の構造や参加者の心理を深く理解することが、このダイナミックな環境で道を切り開く鍵となるでしょう。