人工知能（AI）の最前線を走るOpenAIは、現在約60億ドルの二次株式売却を通じて、企業価値を約5000億ドルに引き上げる交渉を進めていると報じられています。この動きは、同社がAI分野で急速に拡大する影響力と、将来の成長に対する投資家の強い期待を反映しています。現在の評価額3000億ドルから大幅な上昇となるこの取引では、ソフトバンク・グループ、ドラゴニア・インベストメント・グループ、そしてスライブ・キャピタルといった既存の主要投資家が、現従業員および元従業員から株式を取得する見込みです。
OpenAIの目覚ましい成長は、その収益にも顕著に表れています。2025年7月時点で年換算収益は130億ドルに達し、2024年の約37億ドルから大幅に増加しました。この急成長は、ChatGPTのサブスクリプションモデル、API利用、そして企業向けソリューションの提供といった多角的な収益源によって支えられています。特にChatGPTは、週に約7億人のアクティブユーザーを抱えるまでに成長し、その影響力は広範な産業に及んでいます。
しかし、OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AI分野への過剰な投資とそれに伴うバブルの可能性についても警鐘を鳴らしています。彼は、AIの基盤となる技術の重要性を認めつつも、一部のスタートアップが実態以上に高い評価を受けている現状に懸念を示しており、過去のドットコムバブルのような状況を繰り返さないよう、ファンダメンタルズへの注力を促しています。それでもなお、アルトマン氏はAIがもたらす経済的恩恵に対する楽観的な見方を変えておらず、データセンターインフラへの巨額投資計画も明らかにしています。この戦略的な投資は、将来のAI需要に対応するための基盤を築くものです。
今回の株式売却は、OpenAIの従業員にとって、会社の成長に伴う成果を現金化する機会を提供すると同時に、メタのような競合他社との人材獲得競争が激化する中で、優秀な人材を維持するためのインセンティブとしても機能します。この評価額が実現すれば、OpenAIはイーロン・マスク氏のSpaceXを抜き、世界で最も価値のある非公開企業となる可能性があります。
AI業界全体が急速な進化と同時に過熱感も抱える中、OpenAIの動向は注目されています。同社は、技術革新を推進しつつも、持続可能な成長と市場の健全性を両立させるという課題に直面しています。将来的に数兆ドル規模のインフラ投資を計画している同社の戦略は、AIの未来を形作る上で重要な役割を果たすでしょう。