タイは、外国人観光客がビットコインやイーサリアムなどのデジタル通貨をタイバーツに両替できる「TouristDigiPay」イニシアチブを開始しました。このプログラムは、国際的な訪問者の支払いを簡素化することで、観光セクターの活性化を目指しています。
この取り組みは、特に中国からの観光客数の減少に直面しているタイの観光産業を再活性化するための重要な一歩となります。2025年上半期には約1680万人の観光客を受け入れましたが、これは前年同期の1770万人に比べて減少しており、東アジアからの訪問者は24%、中国からの訪問者は34%減少しました。日本やベトナムといった近隣諸国が、より魅力的な通貨レートや低コストで旅行者を惹きつけている状況下で、タイは革新的なアプローチを模索しています。
TouristDigiPayに参加する観光客は、タイ証券取引委員会(SEC)およびタイ中央銀行(BOT)によって規制されたデジタル資産事業者および電子マネープロバイダーに口座を開設する必要があります。これにより、デジタル通貨をタイバーツに変換し、タイ国内で広く利用されているQRコード決済などを通じて支払うことが可能になります。このシステムは、規制サンドボックス内で運営され、マネーロンダリング防止(AML)および顧客確認(KYC)といった厳格な手続きが実施されます。直接的な仮想通貨での支払いではなく、あくまでタイバーツへの両替を介するため、通貨の安定性は維持されます。
タイ証券取引委員会のポルナノン・ブサドラタラグーン事務局長は、このプロジェクトがSEC規制下のデジタル資産取引システムとタイ中央銀行が監督する電子マネーシステムを統合する既存のエコシステムに基づいていると説明しています。また、副首相兼財務大臣のピチャイ・チュンハヴァジラ氏は、このプログラムが海外からの訪問者の現金やカードへの依存を置き換える革新的な支払いソリューションになると強調しています。月間取引限度額が設定され、一部の高リスク業種はプログラムから除外されるなど、安全対策も講じられています。
このイニシアチブは、タイの広範なデジタル資産政策の一環であり、デジタル通貨の利用を促進し、観光客に利便性の高い支払い方法を提供することで、国の経済成長を支援することを目的としています。この試みが成功すれば、タイは東南アジアにおけるデジタル観光のリーダーとしての地位を確立し、他の国々へのモデルケースとなる可能性があります。タイ政府は、この新しいデジタル決済システムを通じて、観光客体験の向上と経済への貢献を目指しています。