ポルトガル、金融リテラシー義務化を推進：次世代の経済的自立に向けた教育改革

ポルトガルの教育現場は、実生活に直結した実践的技能の習得へと大きく舵を切っている。その象徴的な動きとして、市民科・発展科（Cidadania e Desenvolvimento）に金融リテラシー教育が義務的に組み込まれた。これは、若者が将来の経済的局面を乗り切るための確かな羅針盤を手にすることを目指す、教育の質の転換点と見なされている。

この取り組みへの強い決意は、2025年10月31日にフェルナンド・アレクサンドル教育大臣がリスボンのジョゼ・ゴメス・フェレイラ高等学校を訪問した際に改めて示された。特筆すべきは、同校の卒業生でもあるジョアキム・ミランダ・サルメントント国家・財務大臣が、11年生約150名を対象に2時間にわたる貯蓄に関する講義を実施した点である。これは、国の指導層が直接未来の担い手に知恵を授けるという、教育への深い関与を物語っており、「市民教育：貯蓄は未来への誓約」という全国プログラムの一環として推進されている。

同様の動きは全国に波及しており、ポルトガル銀行総裁のアルヴァロ・サントス・ペレイラ氏もコインブラのエスコラ・セクンダリア・アヴェラル・ブロテロで11年生と12年生を対象に金融リテラシーの授業を実施した。これらの行動は、PISA 2022の結果が示唆する、ポルトガル学生の金融商品やデジタル管理ツールに関する知識のギャップを埋めるための時宜を得た対応である。PISA 2022の金融リテラシー評価において、ポルトガルは2018年調査からスコアが11ポイント低下し494ポイントとなり、OECD平均を下回る9位に位置した。また、OECD諸国の中で、ポルトガルは社会経済的に最も恵まれた学生層の数学の平均点も、エストニアや日本と比較して伸び悩む傾向が見られた。

教育省は、金融教育の広範な浸透を目指し、「トドス・コンタム（誰もが数える）」のようなプロジェクトも後押ししている。この教育の根幹には、若者が将来の経済的試練に備え、情報に基づいた金融判断を下す力を養うという目的がある。これは、自己の経済的基盤を確立し、より安定した未来を築くための内なる力を育むことに他ならない。

金融教育の重要性は世界的な認識となっており、例えばイギリスでは2014年から公立学校のカリキュラムに金融教育が必修化されている。PISA 2022の金融リテラシー調査では、金融リテラシーが高い学生ほど、責任ある行動をとり、より将来志向で積極的であるという傾向が示された。ポルトガルが今回取り組んでいるのは、まさにこの次世代の自律性を高めるための先見の明ある布石である。