ロンドン新都市計画:住宅危機への対応と緑地帯の課題

編集者: Татьяна Гуринович

英国政府は、住宅供給の逼迫を緩和するため、ロンドン近郊の2つの地域に新たな都市を建設する計画を発表しました。2025年に着工予定のこの大規模プロジェクトは、エンフィールド区のクルーズ・ヒルとグリニッジ区のテムズミードを対象としています。特にクルーズ・ヒルでは、21,000戸の住宅建設が見込まれており、これには医療施設や学校、レクリエーション施設といった生活に不可欠なインフラ整備も含まれます。エンフィールド区議会は以前からこの地域を住宅開発に適した場所とみなしていましたが、環境保護団体からは緑地帯(グリーンベルト)への開発に対する懸念の声が上がっています。

テムズミード地域は、既に大規模な再開発が進められており、新たな都市開発の候補地として有力視されています。この地域では、ロンドン中心部との接続性を向上させるためのドックランズ・ライト・レイルウェイ(DLR)延伸計画も検討されており、交通網の改善が期待されています。これらの新都市開発は、ロンドンの住宅不足を解消し、増加する人口に対応するための重要な一歩となります。また、活用されていない地域を活性化し、都市全体の持続可能な成長を目指す広範な戦略の一環でもあります。現在、両地域ともに計画策定と住民協議が進行中であり、地域社会のニーズに応えつつ、環境への配慮も進められています。

ロンドンの住宅危機は深刻であり、2024年には約33万6千人が公営住宅の待機リストに名を連ねています。住宅建設のペースも鈍化しており、2019年から2020年にかけて年間45,680戸だった新築住宅の供給が、2023年から2024年には32,160戸に減少しました。このような状況下で、政府は年間約9万戸の住宅建設目標を掲げています。

クルーズ・ヒル開発においては、緑地帯の保全に関する議論が活発に行われています。英国では、都市の無秩序な拡大を防ぐために緑地帯が設けられていますが、住宅不足の解消のために、その一部を開発に充てるべきだという意見も存在します。特に、環境的な価値が低いとされる「グレーベルト」と呼ばれる土地の活用が注目されています。しかし、環境保護団体からは、緑地帯のさらなる開発は生態系や自然景観に悪影響を与える可能性があるとの懸念が表明されています。

テムズミード地域では、DLR延伸計画が地域活性化の鍵となると考えられています。この延伸により、テムズミードはロンドン市内でのアクセスが大幅に改善され、新たな住宅開発だけでなく、雇用機会の創出や地域経済の活性化にも繋がると期待されています。この計画は、2030年代初頭の開業を目指しており、地域住民の生活の質向上に大きく貢献すると見込まれています。

これらの新都市開発は、単に住宅を供給するだけでなく、地域社会全体の発展を目指すものです。学校、医療機関、公共交通機関といったインフラ整備を包括的に行うことで、持続可能で質の高いコミュニティの形成が目指されています。しかし、緑地帯の開発に関する環境問題や、地域住民との合意形成など、解決すべき課題も残されています。これらのプロジェクトの成功は、住宅需要と環境保全のバランスをいかに取るかにかかっています。

ソース元

  • BBC

  • Enfield Dispatch

  • On London

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