欧州連合（EU）がロシアへの制裁回避を支援したとして2つの中国系金融機関を制裁リストに追加したことを受け、中国はリトアニアの銀行2行に対し対抗措置を講じました。この動きは、両者間の経済的・外交的緊張を一層高めるものとなります。EUは7月18日、ロシア国境に近い黒河農村商業銀行と黒竜江綏芬河農村商業銀行を制裁対象に加えました。これに対し中国商務部は、EUの措置が「国際法と国際関係の基本規範に著しく違反し、中国企業の正当な権利と利益を深刻に侵害する」と非難し、報復措置を示唆していました。
その結果、中国は8月13日、UAB Urbo BankasとAB Mano Bankasというリトアニアの銀行2行を対抗措置リストに含めました。これにより、中国国内の組織や個人はこれらの銀行との取引、協力、その他の関連活動を行うことが禁止されます。中国商務部は、EUの措置が「中国企業に深刻な悪影響を及ぼし、中国とEUの経済・貿易関係にマイナスをもたらす」と表明しました。この一連の出来事は、ウクライナ戦争に対するアプローチの違いから生じる、中国とEU間の広範な貿易および外交上の対立の一部を浮き彫りにしています。EUは中国に対し、ロシアの侵略を止めるために影響力を行使するよう求めていますが、中国は一貫して紛争の政治的解決を望む姿勢を示しています。
今回の制裁と対抗措置は、EUが中国の電気自動車に対する補助金問題や、地政学的な相違点など、他の分野でも中国との間に緊張を抱えている文脈の中で発生しています。例えば、EUは中国の過剰生産能力に対処するため、電気自動車への関税賦課や、中国の医療機器に対する公的調達市場へのアクセス制限などを検討しています。また、中国はEUのプラスチックに対するアンチダンピング関税や、ブランデー、豚肉の輸入に関する調査など、報復措置を講じてきました。このような状況下で、中国は自国の金融システムへの依存を減らすため、人民元建て決済や、中国国内のクロスボーダー決済システム（CIPS）の拡大を加速させています。これは、米ドルやSWIFTシステムへの依存を減らす戦略的な動きとも見られています。投資家にとっては、地政学的なリスクと経済的な分断が進む中で、新たな投資機会とリスクの両方を慎重に見極める必要性が高まっています。一方で、EUは気候変動などの分野で中国との協力を模索しており、両者間の関係は複雑な様相を呈しています。この相互の措置は、グローバルな経済秩序とサプライチェーンの再構築に影響を与える可能性を秘めています。