欧州委員会は、ガザ地区におけるイスラエル軍の約2年間の軍事作戦とそれに伴う多数の死傷者を受け、EUとイスラエルの貿易協定の一部停止を提案しました。この提案は、イスラエルからの輸出の約37%に相当する品目に新たな関税を課すもので、年間約2億2700万ユーロの追加関税が見込まれています。特に、果物や野菜などの農産物が影響を受けるとみられています。
今回の措置には、イスラエルのベザレル・スモトリッチ財務相とイトマール・ベン=グヴィル国家安全保障相による暴力扇動への制裁、および暴力的な入植者やハマス関係者への制裁も含まれています。これらの提案が発効するには、EU加盟国の支持が必要です。EUの外交トップであるカヤ・カラス氏は、これらの制裁案はガザ地区での暴力激化への対応であると述べました。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長も以前から、欧州が行動を起こし、ネタニヤフ政権にガザでの行動停止を促すよう呼びかけていました。
貿易協定の停止にはEU加盟国の有効過半数の賛成が必要ですが、制裁対象者の追加には全会一致が求められます。過去にはロシアに対する制裁などで全会一致の達成が困難であった例もあります。チェコ、オーストリア、ハンガリー、ブルガリア、そして特にドイツなどがこれらの措置に反対していると報じられています。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相の姿勢は、イスラエルへの部分的な武器禁輸措置に対する批判を受けて、今後も変わらない可能性が高いです。
欧州委員会は、これらの提案された制裁がイスラエル政府に最大限の圧力をかけることを目的としていると強調しています。個別の制裁対象には、ヨルダン川西岸地区での違法入植地推進派であるスモトリッチ氏と、イスラエル至上主義および反アラブ思想で知られるベン=グヴィル氏が含まれます。承認されれば、両イスラエル政治家の欧州内の資産は凍結され、EUへの入国が禁止されます。同様の措置は、暴力的な入植者やハマス関係者にも適用される予定です。
さらに、EUはイスラエルとの制度的協力を停止することも提案しており、エネルギー、気候変動、データ管理などの技術交流も含まれます。イスラエルでの欧州プロジェクトも中止され、約1400万ユーロの投資損失が見込まれています。しかし、反ユダヤ主義との闘いや、イスラエルとパレスチナ社会間の平和構築プロジェクトへのEUの資金提供は継続されます。
EUとイスラエルの貿易関係は、2000年に発効したEU・イスラエル連合協定の一部である自由貿易圏によって規定されています。この協定は、産業財の自由貿易を確立し、農産物の貿易自由化を拡大するものです。イスラエルはEUにとって最大の貿易相手国であり、2024年には両者間の貿易総額は426億ユーロに達しました。今回の提案は、ガザ地区での人道危機の深刻化に対応し、イスラエル政府に行動変容を促すためのものです。しかし、加盟国間の意見の相違が、これらの措置の採択を困難にする可能性があります。