米国大統領ドナルド・トランプ氏は、NATO（北大西洋条約機構）加盟国に対し、ロシアからの石油購入を停止するよう強く要請しました。同氏は、この措置がウクライナ紛争の早期終結を促すと信じており、NATOの紛争解決への取り組みが「100％には程遠い」と指摘しています。一部加盟国が依然としてロシア産石油を輸入している現状を「衝撃的」と非難し、これがロシアに対するNATOの交渉力を弱めているとの見解を示しました。
2023年以降、NATO加盟国の中でロシア産石油の購入量が上位に挙がるのは中国とインドに次いでトルコであり、ハンガリーやスロバキアも引き続き購入を続けている国として名指しされています。これらの要請は、ロシア軍によるポーランド領空へのドローン侵入といった緊張の高まりを受けて発せられました。ポーランドはこれに対し、空域防衛システムを起動させ、NATO同盟国は警戒態勢を維持しています。
さらにトランプ氏は、中国によるロシア産石油の継続的な購入に対し、50％から100％の関税を課すことを提案しました。これは、中国がロシアに対して持つ影響力を抑制する狙いがあると考えられています。中国は2023年にロシア産原油の最大の輸入国となり、サウジアラビアを抜きました。欧州連合（EU）もロシア産エネルギーへの依存度低減を進めていますが、ハンガリーやスロバキアなどは依然としてロシア産エネルギーを輸入しており、EU内での足並みを揃えることの難しさも浮き彫りになっています。
国際的なエネルギー市場の動向は、地政学的な緊張と各国の戦略的判断が複雑に絡み合っています。ロシアからの石油収入が紛争の資金源となっているとの認識から、エネルギー供給網の見直しと、それを通じた国際社会の結束強化が、今後の重要な焦点となるでしょう。このような状況は、各国がエネルギー安全保障と国際秩序の維持に向けて、新たな協力の形を模索する機会とも言えます。