2025年9月23日、ニューヨークで開催された国連総会の傍らで、ドナルド・トランプ前米大統領は、NATO加盟国領空へのロシア機の侵犯に対し、撃墜措置を取るべきとの見解を示しました。この発言は、近年、特に2025年9月以降、東欧におけるロシアによる領空侵犯が頻発し、NATO加盟国間の緊張が高まっている状況下でなされたものです。
9月19日には、ロシアのMiG-31戦闘機3機がエストニア領空に約12分間侵入しました。これに対し、エストニアはNATOに協議を要請しました。 さらに、9月22日にはデンマークの複数の空港周辺で、正体不明のドローンが目撃され、一部の空港では数時間にわたる閉鎖措置が取られました。 デンマーク政府はこれを「重要インフラに対する深刻な攻撃」と非難し、ロシアの関与の可能性を否定できないとしています。 これらのドローン飛行事案は、9月10日にポーランド領空に侵入したロシア製ドローン「ガーベラ」の迎撃や、9月13日にルーマニア領空を侵犯したとされるロシアのドローンといった一連の出来事と関連付けられています。
これらの相次ぐ領空侵犯に対し、NATOは警戒を強めており、ポーランドは9月10日にNATO条約第4条に基づく緊急協議を要請しました。 これは、加盟国の領土保全、政治的独立、または安全が脅かされた場合に協議を求めることができる条項です。 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、NATO諸国を攻撃する意図はないとしながらも、ロシアへの「侵略」には断固報復すると警告しており、NATO側も東欧の防衛強化を進める動きを見せています。
このような状況下で、トランプ氏の発言は、NATOの結束と対応のあり方について、改めて議論を呼ぶものとなりました。彼は、ウクライナが欧州連合（EU）からの支援を受けて領土を回復できるとの見通しも示しつつ、米国によるNATOへの武器供与は「状況次第」であるとも述べており、今後の展開が注目されます。 ロシア側は、エストニアによる領空侵犯の発表を「虚偽」と主張するなど、双方の主張には隔たりが見られます。 これらの出来事は、欧州における安全保障環境の複雑さと、国際社会の注視が必要であることを示唆しています。