ハンガリーとスロバキアは8月18日、ウクライナによるドルジバ石油パイプラインへの攻撃により、ロシア産原油の供給が停止したと発表しました。この出来事は、欧州のエネルギー安全保障に対する懸念を高め、関係国間の外交的な緊張を招いています。
ドルジバ石油パイプラインは、1960年代に建設され、ロシア産原油をベラルーシ、ウクライナを経由してハンガリーやスロバキアなどの中央ヨーロッパ諸国へ供給する主要な動脈です。欧州連合（EU）は2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、多くのロシア産原油の輸入を禁止しましたが、ドルジバ石油パイプライン経由の供給については、ハンガリーとスロバキアへの例外措置を講じてきました。しかし、ウクライナはロシアの戦争遂行能力の源泉であるエネルギーインフラへの攻撃を強化しています。
今回の供給停止は、ウクライナ軍がロシア領内の石油パイプライン施設を攻撃したことによるものとされています。ハンガリーのシヤルト・ペーテル外務貿易大臣は、この攻撃を「挑発的で容認できない」と非難し、ハンガリーのエネルギー安全保障に対する攻撃であると述べました。同大臣は、この攻撃がハンガリーを戦争に引き込もうとする試みの一部であると指摘し、ロシアの副エネルギー大臣からパイプラインの復旧作業が行われているものの、供給再開の時期は未定であるとの連絡を受けたと明らかにしました。
これに対し、ウクライナのシビハ外務大臣は、戦争の責任はロシアにあると述べ、ハンガリーがロシアへのエネルギー依存を減らすために十分な努力をしていないと批判しました。同大臣は、ハンガリーに対し、不満や脅迫はモスクワに送るべきだと応じました。
欧州委員会は、ハンガリーおよびスロバキアと連絡を取り合っており、エネルギー安全保障の維持の重要性を強調しています。この事態は、欧州諸国がロシア産エネルギーへの依存度を低減しようとする中で、エネルギー供給網の脆弱性と地政学的な複雑さを浮き彫りにしています。ハンガリーは、EUの制裁措置にもかかわらず、ロシア産原油への依存度を維持しており、今回のパイプラインへの攻撃は、エネルギー供給の安定性に対する新たな課題を突きつけています。この出来事は、欧州全体のエネルギー戦略の見直しと、より強固なエネルギー安全保障体制の構築に向けた動きを加速させる可能性があります。