8月18日、ウクライナ軍によるドルジバパイプラインの変電所への攻撃により、ロシアからの石油供給がハンガリーとスロバキアへの供給を停止しました。この事態は、両国のエネルギー安全保障に対する懸念を高めています。
ハンガリーのシヤルトー・ペーテル外務大臣は、この攻撃を「我が国のエネルギー安全保障に対する攻撃であり、言語道断かつ容認できない」と非難しました。ロシア副エネルギー大臣のパヴェル・ソロキン氏によると、現在復旧作業が行われていますが、供給再開の見通しは立っていません。ウクライナのシビハ・アンドリー外務副大臣は、ハンガリーに対し、不満はモスクワに向けるべきであり、キエフではないと述べ、戦争の責任はロシアにあることを強調しました。スロバキアのパイプライン運営会社であるトランスペトロルも、事件がスロバキア国外で発生したため、供給停止の原因に関する追加情報はないとしながらも、石油供給が中断されたことを確認しました。
この出来事は、エネルギー供給網が地政学的な紛争や軍事行動に対して脆弱であることを浮き彫りにしています。ドルジバパイプラインは東欧にとって重要な動脈であり、その寸断はインフラの戦略的重要性を強調しています。ハンガリーとウクライナの見解の相違は、紛争を取り巻く複雑な外交状況を反映しています。ハンガリーがエネルギー安全保障への懸念を示す一方で、ウクライナはロシアの侵略者としての役割を指摘して責任を回避しています。
過去の出来事としては、8月13日にもウクライナがロシアの石油ポンプ施設を攻撃したと発表し、一時的に供給が停止されていました。欧州連合(EU)はウクライナ侵攻への対応としてロシア産石油の輸入を禁止しましたが、代替輸入源の確保に時間を稼ぐため、ドルジバパイプライン経由の供給には例外措置が設けられていました。ハンガリーとスロバキアは、このパイプラインに大きく依存しています。
ハンガリーの石油会社であるMOLは、地域への石油供給は保証されていると述べており、技術的な復旧作業が進めば供給は再開されるとしています。しかし、MOLは2026年までロシア産原油への依存から脱却できない見通しであり、代替供給源の確保が喫緊の課題となっています。カスピ海地域からの原油輸入を増やすことで、年間16万トンの代替原油の利用が可能になるという契約も結ばれていますが、これは地域全体のエネルギー安全保障を強化する一歩となります。
今回の出来事は、エネルギー安全保障戦略の重要性と、紛争が不可欠な資源供給を混乱させる可能性を改めて浮き彫りにしました。ハンガリーとスロバキアは、ロシア産原油への依存度が高いことから、今回の供給停止は経済とエネルギーの安定に大きなリスクをもたらしています。欧州連合(EU)の制裁措置にもかかわらず、ハンガリーとスロバキアはロシアからのエネルギー輸入を継続しており、EUの結束に対する懸念も生じています。
今回の出来事は、エネルギー供給網の脆弱性を露呈させると同時に、各国がエネルギー源の多様化と供給ルートの確保にいかに取り組むべきかという課題を突きつけています。MOLのような企業は、代替原油の調達や精製能力の向上に投資していますが、地政学的なリスクを考慮した長期的な戦略が不可欠です。