中国は再生可能エネルギー分野において、革新的な風力タービン技術の開発を加速させている。特に、高高度を利用する「滞空型風力タービン」と、洋上の深海域に適応する「浮体式洋上風力タービン」の二つの分野で目覚ましい進歩を遂げており、これらは世界のエネルギー供給の未来を形作る可能性を秘めている。
北京SAWESエナジーテクノロジー社と清華大学は、高度1,500メートルで風力発電を行う「S1500」の開発を進めている。このシステムは、ヘリウムで満たされたエアロスタットが発電設備を上空に運び、そこでより強く安定した風を捉え、テザーケーブルを通じて地上にエネルギーを送る。この技術は、1957年に科学者銭学森氏が提唱した「噴流拡散ダクト理論」に基づいている。SAWES社は過去にS500(2024年10月に高度500メートルで50kW発電)やS1000(2025年1月に高度1,000メートルで100kW発電)を開発しており、S1500では1メガワット(MW)の出力を目指している。これは従来の地上設置型タービンと比較して約27倍の発電量となる可能性があり、遠隔地や災害時の電力供給源としても期待されている。
一方、中国華能集団と東方電気は、17MW級の浮体式洋上風力タービンのプロトタイプを開発した。このタービンは直径262メートルのブレードを持ち、ハブの高さは地上から152メートルに達する。設計上、24メートルを超える波や台風クラスの強風にも耐えることができ、年間約6,300世帯(一部報道では約40,000世帯)の電力需要を賄うことが可能である。世界の洋上風力発電ポテンシャルの約80%が水深60メートルを超える深海域に存在することを考えると、浮体式技術はこれらの未開発海域へのアクセスを可能にし、洋上風力発電の可能性を大きく広げる。このタービンの主要コンポーネントはすべて中国国内で製造されており、中国の産業基盤の強固さを示している。
これらの進歩は、中国がクリーンエネルギー技術の最前線に立ち、持続可能な未来への移行を力強く推進していることを示している。高高度の風を捉える革新的なアプローチと、広大な海洋資源を活用する浮体式技術は、エネルギー供給の多様化と安定化に大きく貢献するだろう。