ノースカロライナ州立大学(NC State)の研究チームは、ソフトロボティクスの分野で大きな一歩となる革新的な3Dプリンティング技術を発表しました。この開発の核心は、「磁気筋」として機能する極薄の磁性フィルムを、ロボットの折り紙構造に直接組み込む点にあります。2025年9月に公表されたこの手法は、従来のシステムが抱えていた主要な制約、すなわち、ソフトな表面の完全性を損なう硬質な磁気アクチュエーターの柔軟性の欠如を見事に解消しました。これにより、よりしなやかで制御性の高いロボットの実現が可能となります。
ウィルソン繊維学部(Wilson College of Textiles)のシャオメン・ファング准教授が関与したこの新しいアプローチは、ゴムベースのポリマーと強磁性粒子を共押出(co-extrusion)することに基づいています。このプロセスを経て、弾力性のあるフィルムが生成されます。このフィルムを折り紙ロボットの重要な部分に適用することで、構造本来の柔軟性を維持しつつ、外部の磁場によって制御された動きを実現します。プロジェクトに携わったチームメンバーには、ファング准教授の他に、セン・チャン、ユアン・リ、ジメン・リ、ナビール・チェディッド、ペイキ・チャン、そしてケ・チェンが含まれています。
研究チームは、この技術の可能性を示すために、二つのモデルで実証を行いました。どちらのモデルも、日本の伝統的な幾何学模様であるミウラ折りパターン(Miura-Ori)を採用しています。一つ目のサンプルは、非侵襲的な薬剤送達を目的として設計されました。試験では、温水が入ったプラスチック製の球体という模擬胃の環境下で、ロボットは磁場を用いてシミュレーションされた潰瘍病変へと正確に誘導されました。外側に取り付けられたソフトな磁気フィルムが固定された後、デバイスは展開し、薬剤を制御しながら放出しました。これは、より安全で的確な医療介入への道を開くものです。
二つ目の実証モデルは、這うような移動能力を示しました。このロボットは、外部磁場を活性化および非活性化することで「筋肉」を収縮・弛緩させ、最大7 mmの高さの障害物を乗り越えることができました。このような移動における適応性は、この開発の多用途性を際立たせています。シャオメン・ファング氏は、これらの磁気筋は多様な折り紙構造に応用可能であり、生物医学や宇宙探査といった分野での課題解決に展望を開くと述べています。本研究は、外部からの制御入力に対する直接的な応答として動作する、ソフトシステムの制御を新たな水準へと引き上げるものです。
