カリフォルニア州は、繰り返される干ばつと水資源の枯渇という喫緊の課題に対し、米国初の主要な海底淡水化プロジェクト「ウォーターファーム1（WF1）」の実現に向け大きく前進しています。太平洋の海水を飲料水へと転換するこの取り組みは、持続可能で強靭な水供給の新たな時代を切り開くものです。
このプロジェクトを主導する水技術企業OceanWellは、ラスビジニアス水道区（LVMWD）およびカリフォルニア州の他の6つの水道事業者と提携し、海底システムを用いた淡水化を進めています。目標は、2030年までに日量最大6,000万ガロン（約2億2700万リットル）の飲料水を生産することです。当初はロサンゼルス郡西部地域の約7万人の住民に供給され、その後、メトロポリタン水道区（MWD）のネットワークを通じた水交換システムにより、バーバンク市などのより遠隔地の都市にも供給される予定です。
この先進的な技術は、深海の水圧を利用することで、従来の淡水化方法と比較してエネルギー消費を最大40%削減し、環境への影響を最小限に抑えることを目指しています。特に、高濃度のブライン（濃縮塩水）の排出をなくし、海洋生態系を保護するOceanWell独自の「LifeSafe™」システムは、環境への配慮を重視する点で注目されています。
WF1プロジェクトは、2025年3月にパイロットプロジェクトを完了し、その有効性を実証しました。このパイロットプログラムは、LVMWDとの協力のもと、ラスビジニアス貯水池で実施され、単一のポッドが高度に生物活性のある条件下で淡水を生産する可能性を示しました。この成功を受けて、プロジェクトは商業規模での展開へと移行し、貯水池での単一ポッドから、深海で稼働する多数のポッドへと拡張されます。
この取り組みは、2023年12月には米国再生可能エネルギー庁（USBR）の「Pitch to Pilot」プログラムから23万6,877ドルの助成金を受け、その革新性と持続可能性への期待が公的にも認められています。カリフォルニア州は、気候変動による干ばつの頻発化・激甚化、山岳地帯の積雪量の減少、蒸発量の増加、コロラド川の水量の低下など、深刻な水不足に直面しています。このような状況下で、WF1のようなプロジェクトは、カリフォルニア州のデルタシステムやコロラド川といった、すでに逼迫している既存の水供給システムへの圧力を軽減し、より強靭で気候変動に適応した水供給の未来を確保するための新たなモデルを提供します。
OceanWellのCEOであるロバート・バーグストロム氏は、「カリフォルニアは、世界中の多くの地域と同様に、枯渇しつつある供給源に代わる新たな水源を緊急に必要としています。ウォーターファーム1は、私たちがどのようにして責任ある、そして経済的な方法で海から真水を採取できるかを示しています」と述べています。このプロジェクトは、陸上に大規模なプラントを建設する必要がないため、自然景観を損なうことなく、沿岸部の生態系を乱すこともありません。また、深海での運用により、悪天候や海面上昇の影響からも保護され、信頼性の高い高品質な淡水供給を可能にします。
バーバンク市は、メトロポリタン水道区（MWD）との水交換システムを通じてこのプロジェクトの恩恵を受ける予定です。これは、新しい水供給源を既存のインフラストラクチャに統合する際の適応性を示しています。環境保護団体や地域社会は、パイロットプロジェクトの結果を評価し、最終的なプラント設計を洗練させるための影響を検討しており、プロジェクトの持続可能な開発へのコミットメントを反映しています。
ウォーターファーム1は、単に水を供給するだけでなく、自然の力を活用し、環境への配慮を最優先するという、水資源管理における新たなアプローチを体現しています。この革新的な取り組みは、カリフォルニア州の水問題に対する希望の光となり、将来の水不足に悩む他の地域へのモデルケースとなる可能性を秘めています。