インドと中国は、両国間の直行便を再開することで合意し、2020年の国境紛争以来緊張していた二国間関係の安定化に向けた重要な一歩を踏み出した。この動きは、最近の高官レベルの外交交渉と、中国によるインドの主要な懸念事項への対応表明に続くものである。
2025年8月18日から19日にかけて、中国の王毅外相はニューデリーを訪問し、インドの国家安全保障担当補佐官であるアジット・ドバル氏と第24回特別代表会談を行った。この会談では、国境の平和と安定の維持が強調され、国境線の画定と管理のための新たな専門家・作業部会の設置で合意に至った。さらに、中国はインドが懸念するレアアース、肥料、トンネル掘削機（TBM）に関するインドの要求に対応することを約束した。これらの品目に対する中国の輸出規制緩和は、インドの産業界やインフラプロジェクトにとって重要な意味を持つ。特に、肥料の供給不足やレアアースの不足は、インドの農業や製造業に影響を与えていたため、今回の合意は経済的な安定化に寄与すると期待される。
この外交的な進展は、8月31日から9月1日にかけて中国の天津で開催される上海協力機構（SCO）首脳会議に向けて行われた。インドのナレンドラ・モディ首相もこの会議に出席する予定であり、これは両国関係の正常化に向けた重要な機会となる。両国は、2025年の外交関係樹立75周年を記念するイベントでの相互支援や、2026年のBRICSサミット（インド開催）および2027年のBRICSサミット（中国開催）における協力についても合意した。
直行便の再開は、パンデミックと国境紛争により5年間中断されていた航空便の接続を回復させるものであり、旅行者、ビジネス関係者、そして家族にとって、アジアのハブを経由する迂回ルートを避けることができるようになる。これにより、観光、ビジネス、文化交流が促進され、両国間の人的往来が活発化することが期待される。アナリストらは、この関係改善の動きを、両国が対立を管理し、共通の利益を追求しようとする実用的なアプローチの表れと見ている。インドと米国との関係における最近の緊張も、インドが二正面での対立を避けるための戦略的判断に影響を与えている可能性がある。
今回の直行便再開と外交的な対話の活発化は、インドと中国が過去の緊張を乗り越え、より安定した協力的な関係を築こうとする意思を示している。国境問題の最終的な解決には依然として政治的な妥協が必要であるが、これらの進展は、両国が共通の課題に対処し、地域および世界の安定に貢献するための前向きな道筋を示唆している。