福岡県は2025年8月、日本初の浸透圧発電所の稼働を開始しました。この施設は福岡市の海の中道奈多海水淡水化センターに設置され、福岡地区水道企業団が運営しています。浸透圧発電は、淡水と海水との塩分濃度の違いを利用して発電する技術で、持続可能なエネルギー源として期待されています。
この発電所では、海水淡水化の過程で排出される濃縮海水と下水処理水を活用しています。塩分濃度の低い下水処理水が半透膜を通して塩分濃度の高い濃縮海水側へ移動する際の浸透圧を利用し、タービンを回して発電します。この方式は天候や時間帯に左右されず、約90%という高い稼働率が見込まれています。
年間約88万キロワット時の発電能力を持ち、これは一般家庭約220世帯分の年間電力消費量に相当します。発電された電力は淡水化プラントの運転に利用され、地域の水供給を支えます。福岡地区水道企業団の廣川所長は、「将来的に通常の海水を使った実用化を目指しており、この技術が世界中に広がることを期待しています」と述べています。
商業規模の浸透圧発電プラントとしては、デンマークのプラント（2023年稼働開始）に次いで世界で2番目となります。福岡の施設はより大規模であり、浸透圧発電技術の進歩を示しています。専門家からは、この技術が既存の再生可能エネルギーの不安定さを補完する可能性が指摘されています。
浸透圧発電は、太陽光や風力発電とは異なり、天候に左右されない安定した発電が可能です。これは再生可能エネルギー普及における重要な課題を克服する可能性を示唆しています。山梨大学の研究によると、日本全国の河口に同様の施設を設置した場合、年間約66万キロワットの発電量が見込まれており、これは国内の地熱発電全体の量を上回る規模です。しかし、発電コストや技術的な課題も依然として存在し、今後の技術開発と普及が期待されています。
この福岡での取り組みは、日本が再生可能エネルギー分野で革新を続ける姿勢を示すものであり、脱炭素社会の実現に向けた重要な一歩となります。この技術がさらに発展し、世界中のエネルギーミックスに貢献することが期待されています。